雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ10)

今日:99 hit、昨日:159 hit、合計:1,584,072 hit

相席ページ10

.

A本人は気づいていないが、彼女はこの雄英高校でそれなりに有名である。

経営科トップ、NO.2ヒーロー・エンデヴァーの娘、ヒーロー科の轟焦凍の双子の妹、体育祭での活躍とベスト１６という成績。

これだけでも申し分ないのだが、加えて可愛いと評判の容姿だ。
峰田も校内で５本の指に入ると認めるほど、ひそかに人気が高い。

今までは偶然を装って隣に座っていた生徒たちだが、後ろにある巨大な勢力に怖じ気ついて、生半可な気持ちでは近づけなくなった。
その上、抜け駆けは許さない！という暗黙の了解が、お近づきになりたいという彼らの意志を阻んだ。

あわよくば同席したいという視線に、本人はまったく気づいていかった。

＊＊＊＊

(ごはん残して教室に戻ろうかな……)

注文したオムライスはまだ半分ほど残っている。
こんな状況で食欲が湧くはずもなく、一向に皿の上は減らない。

「６人のテーブルを占領たァ、良いご身分じゃねーか」
「え？」

顔を上げて声がした方を見ると、麻婆豆腐が乗ったトレーを持つ爆豪が見下ろすように立っていた。

呆然と見上げるAの許可もなく、隣にドカッと座る。
混み合っている食堂の席に許可も何もないので特に気にしないが、他に空いている席があるというのになぜ隣なのだろうか。
それと──

「どうして食堂に……？」
「はぁ？てめーのせいであの場所はＡ組連中のたまり場になっちまったんだよ。どーしてくれんだ、アホ」
「あぁーー……、ごめん」

体育祭以降、Aはあの場所に行っていないので知らなかったが、Ａ組の生徒が昼休みの間、入り浸っているらしい。

それは自分がきっかけでもあるので、爆豪の場所を奪ってしまったことに素直に謝罪した。

「で？あん時言ってた話とやらはいつすんだよ」
「え……？話？ ……あぁ！」

なんのことだ？と首を傾げたがふと思い出した。
また今度話すと言った言葉を彼は覚えていた。
他人の事なんて興味なさそうなのに。

「でももう知ってるでしょ？噂になってるし、メディアでも取り上げられてたみたいだし」
「おめーの口から聞いていねー。他人が好き勝手言う噂なんて、あてになるかっつーの」
「……」

周囲の視線なんてないかのように爆豪は食事を開始した。

──他人が好き勝手言う噂なんて、あてになるかっつーの。

その言葉に少しだけ張りつめていた心が綻んだ。

.