雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ6)

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迷いページ6

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Aの頭を撫でていた焦凍の手が額に移動した。

「熱は？」
「微熱程度。別に風邪ひいているわけじゃないから、そんなに心配しなくて良いよ」

そう言いながらも、兄の右側に体を寄せて涼を求めた。

「A」
「なぁに？」
「…………今日、お母さんに会ってきた」
「そう」
「今度、一緒にお見舞いにいかねぇか？」
「……」

涙を流す母親の顔を思い出す。
個性を使わないでと請う母親の言葉が、Aの心に突き刺さった。

「……」
「A？ ……寝たのか？」

Aは焦凍に抱きつきながら寝たふりをした。
答えられなかったのだ。

きっと焦凍は自分が変わるために、迷いを断ち切るために母親に会いにいったのだろう。
自分の進むべき道をしっかりと決めるために。

Aは迷っている。
母親に会うことを。

約束を破ってしまったことで、また母親を苦しめてしまうのではないかと。

だから──

(ごめん、焦凍。私はもうお母さんには会えない……)

＊＊＊＊

２日間、たっぷり眠ったおかげで休み明けには体はすっかり回復していた。
──といっても、少しだけ筋肉痛が残っているが。
やはり普段から運動をしていないと駄目だなと実感した。

てきぱきと朝の準備をして家を出た。

「あ、焦凍！」
「……A？」

進む先によく知る人物を見つけて呼び止めた。
振り返った焦凍は、自分に駆け寄ってくるAを見て表情を柔らかくした。

「どうした？今日は早いな」
「なんかね、リカバリーガールのところに行くように言われてるの」

体調が回復しているか確認したいから朝に一度保健室に来るようにと。

学校から連絡が来ていたと冬美から聞いていた。
もしかしたら時間がかかるかもしれないので、今日は早めに家を出ることにしたのだ。

「そうか」
「焦凍はいつもこの時間？」
「電車の混み具合がまだマシなんだ」
「そうなんだ」

まだ人の通りが少ない道を２人で並んで歩く。
ちょっとした悪戯心で手を繋いでみると、意外とあっさり受け入れてくれた。
嫌がられると思ったのに拍子抜けだ。

(でも昔みたいで嬉しい……)

「A、その目……」
「目……？あ、カラコン？やめることにしたの。焦凍とお揃いがいいからね」
「……そうか」

照れくさそうに言うと、焦凍も嬉しそうに小さく微笑んだ。

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