雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ5)

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些細なすれ違いページ5

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緑谷と焦凍の試合を見てから、Aの機嫌は急降下していた。

自分の時は使わなかった左側の個性……。
それを、緑谷との試合では使った。

(私にはできなかったのに……)

父の激励の言葉にも耳を傾けず、焦凍は笑って炎を放った。

拳を強く握り込む。
悔しさ、情けなさ、嬉しさ……さまざまな感情が胸の奥ででうずまく。

それから後の試合は頭に入ってこず、気づいた時には表彰式。
表彰台で拘束されながらも暴れる爆豪の姿があった。

冬美は笑っていたけど、Aはただ虚ろな目で画面を見つめるだけだった。

「A、疲れた？もう１回寝る？」
「……うん」

正直、体はまだ本調子ではない。
姉のアドバイスに従い、Aは再び睡眠をとることにした。

まだまだ疲れが残っていたらしく、眠りにつくまでに時間はかからなかった。

＊＊＊

(……ん、誰？)

近づいてくる足音に意識が浮上した。
やがてゆっくりとふすまが開かれ、廊下の灯りが部屋に差し込んだ。

「A、もう大丈夫なのか？」

焦凍が枕元に膝をつき、顔を覗き込む。
それを拒絶するようにAは体を逆に向けて枕に顔を埋めた。

「どうした……？怒ってるのか？」
「私の時には使わなかった……。なのに緑谷君の時は使った」
「……」

不機嫌な声で一方的に責める言葉を吐いた。
何を言いたいか、きっと焦凍は理解しているはずだ。

「…………緑谷か。アイツ、俺ん中にどしどし踏み込んできて、色々と壊していくんだ」
「……」
「アイツは……なんていうか、不思議なやつだ」

Aにはその言葉を否定できなかった。
雄英に入って自分のことを最初に打ち明けたのは緑谷出久だった。

不思議なやつ。
その言葉に妙に納得できた。

でも……悔しい。

「焦凍」
「うぉっと……、なんだ？」

上半身を起き上がらせて、正面から勢いよく兄に抱きついた。
焦凍はよろけながらもしっかりと受け止め、甘えてくる妹の頭を優しく撫でた。

「私ね、焦凍の冷たい目が嫌いだった。なんでそんなふうに私を見るのって、いつも思ってた」
「……あれは、お前がいなくなって何もかもイラついて……。久々に会っても、お前は俺を見て怯えた顔をする」
「焦凍の顔が恐かったからだよ」
「それはお前が俺を避けるからだ」
「……」
「……」
「……ふふっ」

些細なすれ違いに笑みがこぼれる。
逆に焦凍は困った顔をしていた。

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