雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ26)

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安心ページ26

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Aはエレベーターを降り、爆豪から告げられた病室へと向かった。
“誰の”とは告げられていないが予想することは容易い。

昨晩、兄からの電話を待っていたのにスマホは音を鳴らさなかった。
学生なので残業ということはないだろうが、父に付き合わされているのかもしれない。

そう思っていたのに、翌日に報道されたニュースを見てそんな考えは吹き飛んだ。

かわりに頭を駆け巡るのは不安と不吉な予感。

(電話がなかったのは、もしかして……──)

その考えが頭を浸食し、Aは与えられた仕事を満足にこなせなくなった。

いざという時、冷静に動けるようにしなくてはいけないのに、まるで動揺を隠せていない。
事務所内の人間も薄々それを感じとっていた。

だからこそ寺村やベストジーニストは、気を遣ってAをここに寄越したのだ。
事務所を代表して見舞いだなんて名目を用意して。

(なんて、甘いの……)

本当なら、もっと厳しく叱られてもおかしくはないのに。

まだまだ自分は子供であるということを実感させられる。

扉を隔てた病室からは笑い声が漏れていた。
緑谷と飯田だ。
その中に「ハンドクラッシャー」とかいう意味不明な単語が混じっていたが、元気そうなのでひとまずは安心する。

笑いが絶えない病室の扉をそっと開いた。

「失礼します……。あの……」

Aの入室に笑い声はすっとおさまった。
中にいる人間が扉に目を向ける。

「A？」
「焦凍……っ！」

ベッドに腰掛けている焦凍と目が合った。

左腕に包帯を巻いている兄を見て、思わず抱きつこうと駆け寄ったところではっと我に返る。

軽傷のように見えるが、相手はヒーロー殺しと一戦交えている。
見た目以上に大きな怪我をしている可能性がある今、軽々しく抱きついてはいけない。

分かってはいるけど……。

「A」

焦凍は優しい表情で両腕を広げる。
妹の心を見透かしているかのように。

「悪ぃな、連絡入れられなくて」
「焦凍……っ」

近づいて存在を確かめるようにぎゅーっと抱きつく。
胸の鼓動と温もりを感じることができてじわりと涙が溢れた。

「よかった……無事で」
「あぁ」

焦凍に頭を撫でられているAを見て、緑谷と飯田は温かく微笑んだ。

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