雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ23)

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爆豪勝己４ページ23

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保須市に再びヒーロー殺しが現れた。

ニュースや新聞で取り上げられ、Aや爆豪の耳にも届いた。
エンデヴァーが仕留めたということは、“居合わせていた高校生３人”の中に轟がいたと考えるのが自然だ。

「おはよう、諸君。昨晩発生した西東京・保須市での事件、気になるところだろう」

ベストジーニストが朝礼で事件の話に触れた。
サイドキックや事務員が黙って彼の話に耳を傾けている。
そこにはAに姿もあった。

日課のようにベストジーニストに髪を矯正されている爆豪は、ちらりとAを見た。

ニュースを知って、取り乱すのではないかと気になっていたが、思いの外冷静だった。

(あのブラコン女が心配しないわけがねぇ。いや、案外そういうところはドライなのか？)

──と思ったが、本日の動きを見てその考えを改めた。

簡単な計算ミスをしたり、必要な書類をシュレッダーにかけそうになったり(間一髪で回避した)と、彼女には珍しく失敗続きだった。

とても真面目で完璧に仕事をこなすAが、こんなにミスを繰り返すなんて……と、事務員たちは心配していた。

(んのバカが……)

同じ部屋でベストジーニストに“ヒーローのなんたるか”を説かれていた爆豪は(もちろん右から左にスルー)、その一部始終を見ていた。

「ぅわ……っ、あ、す、すみませんっ！！」

今度は何もないところでつまづいて、書類を床にぶちまけていた。
落ち込み気味のAは、寺村に「ちょっと外の空気でも吸って休んでおいで」と気遣われていた。

「──爆豪君、聞いているのか？」
「あン？」
「君の今日の体験メニューを変更すると言っているのだ」

ベストジーニストは爆豪に茶封筒を手渡し、本日のスケジュールを告げた。

＊＊＊＊

爆豪はビルの屋上へと向かった。

そこには柵の手すりに手を置いて下を眺めるAがいた。
飛び降りでも考えているのでは……というくらい表情は沈んでいる。

「ダッセー」
「ぅぐ……」

その背に向かって嫌味を投げかければ、言葉のナイフに心を貫かれたような声が漏れた。
手すりに背中を預けるようにして、Aの隣に並ぶ。

「お前、もっと騒ぐのかと思ったけど、意外と冷静なんだな」
「将来的にヒーロー事務所で働こうとしてるんだよ？こんなことで動揺してちゃ駄目なの」
「……」

しっかりしなきゃ……と、Aは小さく呟く。
誰でもない、自分に言い聞かせるように。

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