雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ32)

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どっちがいい？ページ32

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空がうっすらとオレンジ色に染まりつつあった。

Aは爆豪に手を引かれ、駅の方面に向かってモール街を歩いていた。
上鳴も会話をしながらその隣を歩く。

すると、爆豪がぴたっと足を止めた。
Aと上鳴もそれに合わせて立ち止まる。

「爆豪？どうした？」

上鳴が呼びかけると、爆豪は振り返りAを見下ろした。

「あの……何か？」
「てめー、買い物は？」
「あっ！えっとぉ……まだです」
「あ゛ぁ！？」

いろいろ見て回るのが楽しくなって、本来の目的をすっかり忘れていた。
何やってたんだよと言いたげな爆豪の視線から目を逸らす。

このまま手ぶらで帰ったら、本当に何をしていたんだと呆れられそうだ。
せっかく気を遣ってもらったのに。

「……爆豪君」
「あン？」
「さっきのお店、行っても良い？」
「……すぐ済むんだろうな？」
「爆豪君がちゃんと選んでくれたらね」
「は？」

繋がれた手を、今度はAが引っ張る番だった。
カーディガンを見ていた店はこの近くにあったはずだ。

「上鳴君、私たち今からちょっと買い物があるんだけど」
「俺も行って良い？」
「もちろん。あ、あそこのお店！」

カーディガンを見ていた店を見つけて中に入った。
先ほど悩んでいた２つを手に取って上鳴に見せる。

「紺か黒かで悩んでたんだよね」
「あ～～、似てるけどやっぱ違うもんなぁ」
「でしょ？」
「Aちゃんならどっちかな～～」

正直どっちでもいい。
どっちでもいいからこそ悩むのだ。

「黒……いや、紺の方が落ち着いてるかな？」
「雰囲気的にAちゃんには黒の方が似合うかな～」
「──オイ、帰るぞ」

上鳴と一緒にぶつぶつと呟いていると、苛立ちを含んだ声が背後から聞こえた。

「むぅ、まだ悩んでるんだけど……ってか爆豪君も真剣に考えて──」
「もう買ったわ」
「へ？」

振り返ると、爆豪は片手にお店の袋を持って立っていた。

「え？買ったって……え？」
「時間がねーんだよ。オラ、帰んぞ」

Aの手からカーディガンを取り上げて、もとにあった場所に置いた。
それから店から出るように目で促す。

「てめーらがうだうだと辛気くせーから、俺が適当に買ってきてやったわ。ありがたく思えや」
「え……っ」

ぱちぱちと目を瞬いていると、「おらよ」と押し付けられた袋。
入っていたカーディガンは淡いクリーム色だった。

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