雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ16)

今日:125 hit、昨日:135 hit、合計:1,583,691 hit

職場体験ページ16

.

(１週間、焦凍と会えないのかぁ……)

長い間、会うことがなくても平気だったのに、今では１日１回は顔を見ないと落ち着かない。

向こうも同じなのか、駅で別れる際に「やっぱり俺と親父のところにいかないか？」と無茶を言っていた。

当然のことながら行き先の変更は不可能。
分かってはいるけど、言わずにはいられなかったらしい。

とりあえず「大丈夫、爆豪君も一緒だから心配しないで」と言っておいた。
安心させようと思って言ったのに、なぜか焦凍はさらに顔をしかめた。

「だから心配なんだ」
「……？」
「……なんでも良いから気をつけてくれ。特に爆ご──」
「はいはい、分かったよ。あ、爆豪君待って！行き先一緒なんでしょ？」
「ちょ、Aっ」

時間が迫っているので、焦凍に手を振りながら爆豪の後を追ってホームに向かった。

＊＊＊＊

受け入れ先の事務所へと向かう電車の中、Aは運良く空いていた２人掛けの席に爆豪と並んで座っていた。
集合場所から数駅なので乗っている時間は少ない。

「まさか爆豪君もベストジーニストのところを選んだとはね。１週間よろしくね」
「……ん」

爆豪の反応は薄い。
窓際の僅かなスペースに肘を置き、手のひらに顔の半分を埋めるようにして外を眺めていた。
緊張しているのだろうか。

(いやいや、爆豪君に限ってそれはないか……)

電車を降りて東京都のオフィス街を歩く。
駅からそう遠くない場所にある「ジーニアスOFFICE」のビルに、２人は訪れた。

Aは爆豪の一歩後ろに立ち、すらりと背の高いNo.4ヒーロー・ベストジーニストを見上げる。

「君のように凶暴な人間を“矯正”するのが私のヒーロー活動」

きっちり整えられた髪が一本、僅かにこぼれ落ちた。
それを器用な手つきで素早く整えなおす。

「敵もヒーローも表裏一体……。そのギラついた目に見せてやるよ。何が人をヒーローたらしめるのか……」

最近は『いい子』な志望者ばかりで張り合いがないと言っていた彼は、今日から楽しみだ……という目を爆豪に向けていた。

その熱心な心意気にAは感銘を受けた。

「……えぇ、そればぜひとも彼に知らしめてやって下さい」
「てめーは黙ってろっ！！クソ女っ！！」

ベストジーニストに同意すれば、事務所内にけたたましい爆豪の怒号が響き渡った。

.