108 ページ17
.
夢主ちゃんの豹変ぶりに轟君も困っているようだった。
そりゃそうだよね、他人の教科書ごときでここまで態度が変わるなんて普通、想像できないよ。
私もびっくりよ。
「どうしたんだいきなり。Aが何か──、」
「その人のことは名前で呼ぶんだ。私のことはいつまでたっても呼んでくれないのに」
「……」
轟君を責めるように夢主ちゃんは低い声でつぶやく。
そういえば轟君って未だに夢主ちゃんのことは名字で呼んでるよね。
照れくさいからとかだと思うけど、どうやら夢主ちゃんはそれが不満らしい。なんかごめん。
「ねぇ。私は焦凍君って呼んでるんだから、私のことも名前で呼んでみてよ」
「……」
「……」
「……」
轟君はどんな声で夢主ちゃんの名前を呼ぶんだろうと耳をすませていたけど、沈黙が続くだけだった。
「えっと……あの、焦凍君？……羽穏、って呼んでくれないの？」
無言のまま答えない轟君に、夢主ちゃんは悲しそうな声で囁いた。
名前くらい照れずに呼んであげればいいのに。
「いや、その──」
「もういい！！焦凍君のバカ！」
轟君が何が言おうとしたけど、夢主ちゃんは拒絶するように叫んで教室を飛び出していった。
私がいた場所と反対側の扉からだったので、私の存在には気づかれなかった。
あ、危な……っ。
廊下を走る足音がだんだんと小さくなっていく。
轟君が後を追う気配はなかった。
Ａ組の教室を覗いてみると、床に落ちた私の教科書を拾い上げる轟君が見えた。
夢主ちゃん、他人の教科書を床に叩きつけていったんかい。
「和楽さんのこと、追わなくていいの？」
「……聞いてたのか」
「ごめん。入るに入れなくて」
「……そうだよな。悪ぃ、なんか」
とても気まずい雰囲気である。
昼間の説教なんてする気はすっかり失せてしまった。
「……帰ろうか」
「そうだな」
最終下校時刻が迫っていた。
私と轟君は特に話をするでもなく、ただ帰る方向が同じという理由で寮まで並んで歩いた。
＊＊＊
その翌日だった。
夢主ちゃんが姿を消したと聞いたのは──……
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3457人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
原作の知識を与えられたからには全力で関わりを拒否します。【ヒロアカ】 4.原作の知識を与えられたからには全力で関わりを拒否します。【轟焦凍】 2.原作の知識を与えられたからには全力で関わりを拒否します。【ヒロアカ】
「ヒロアカ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
明日羽(プロフ) - とても素敵な作品でした！意外な展開が多かったですがとっても面白かったです！！出来ればパスワード教えて下さると、嬉しいです (2022年8月14日 10時) (
レス) @page49 id: 671ce2cf6e (このIDを非表示/違反報告)
りか - パスワード教えてください。 (2022年8月11日 11時) (レス) @page49 id: bde2eebd6b (このIDを非表示/違反報告)
いのり - 面白かったです！続き気になるのでパスワード教えてください！ (2022年8月11日 1時) (レス) id: 11519c5148 (このIDを非表示/違反報告)
あやな(プロフ) - できれば、パスワード教えていただけると嬉しいです (2022年8月10日 14時) (レス) id: 166c2e2938 (このIDを非表示/違反報告)
AY(プロフ) - 私もパスワードを教えていただけると嬉しいです (2022年8月3日 18時) (レス) id: faf5f904a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2020年8月4日 21時
