雪と炎のシンフォニー【倉庫】 (ページ10)

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…しないと出られない部屋３ページ10

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「うわ……」

両手に広がる“ソレ”を、Aは不快な表情で見つめていた。
白く粘り気のある液体とも言えない“ソレ”を、手のひらをあわせるようにして馴染ませる。

「私……、コレ初めて触った……」
「あっそ」
「匂いも好きくないし、ベタベタして気持ち悪い」
「いいから、はよやれや」
「はいはい。じゃ……いくよ」

Aはぐっと気合いを入れて、気怠げに椅子に座る爆豪に手を伸ばした。

＊＊＊＊

「ふ～ん、ふふ～ん」

Aは軽快な鼻歌を歌いながら手を動かす。
べたべたと気持ち悪いと思っていた感触は作業の間に忘れ、目の前にあるものがどんどんとかたく固まっていく様子を楽しんでいた。

「……オイ、いつまでやってんだ」
「もうちょっともうちょっと」

不機嫌な爆豪の声を無視して、最後に頭を両手で包み込むように撫でた。

「よし！でーきたっ！」
「てンめぇー……、誰がそこまでしろっつった！？」
「あっははは～」

“その格好”で「あ゛あ！？」と凄みをきかす爆豪が懐かしくて、Aは思わず吹き出してしまった。

「う～ん……、ベストジーニストさんみたいに上手にはできなかったなぁ」
「こんなん、ぱっと塗りゃ良いだけだろーがよ！！」

“こんなん”と言って爆豪が指差す先にあるのは、男性用の『ワックス』だった。
またの名を整髪料。
『あなたの髪をスタイリッシュに！』がキャッチフレーズのシリーズ最新作。

Aは入れ物をじっくりと眺めていた。

「えーっと『自信の持てる髪型で人生を豊かに』……だって。気に入ったならどうぞってお題の紙の後ろに書いてある」
「ざけんなよ」

この部屋から出る条件──『ワックス』
扉の空いた部屋はＡ組の教室に繋がっていた。

「ば、爆豪っ、それ……っマジかよ！！」
「うわ、ひっさびさに見たわそれ～～っ」
「ひゃはははははっ！！」
「……てめーら、ぶっ殺す！！」

Aによって髪を８：２で整えられた爆豪は、遠慮なく爆笑する生徒を追いかけ回していた。

そんな中、ワックスの容器を持って笑顔を浮かべたAが焦凍に近づいた。

「焦凍、焦凍。ワックスしない？」
「……遠慮する」
「ちぇっ」

【番外編０３】了

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