愛することすら、許されない３【爆豪勝己】 (ページ6)

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　何もかもを諦めたその時──、機内が激しく揺れた。

「わ……っ、ん、────……っ、」

　わずかに浮いた体が小刻みにベッドに叩き付けられる。私は舌を噛まないように口を閉じてベッドにしがみついた。

　しばらくそうやって耐えていると、ピタッと揺れが止まった。なぜかジェット機のエンジン音が消えている。これは……どういうこと……？

「え！？」

　恐る恐る窓の外を見ると、私が現在乗っているジェット機は空中で停止していた。

　どうして？と戸惑うよりも、逃げるなら今しかない！という考えが先に浮かんだ。まだ体は重いけれど、個性でパラシュートを創造するくらいならできる。機内の外に出られさえすれば──……

「────A……っ！無事か！？」
「ば、爆豪さんっ！？」

　激しい音を立てて開いた扉から、ヒーローコスチュームを着た爆豪さんが勢いをつけて入ってきた。息を切らして部屋をぐるりと一目する。私以外に誰かいないか確認していた。

「な、なんでここに！？どうしてわかったんですか」
「耳の良い奴に追わせたんだよ」

　この鈴の音をな……と数年前に私が譲った鈴を見せてくれた。

　ああ、やっぱり……と私は自分の鈴を両手で包んだ。嬉しかった。助けに来てくれたこと。その鈴を持ってくれていたこと。

「心配させんなアホ」

　座り込む私に爆豪さんはゆっくりと近づき、筋肉質な両腕を伸ばして抱きしめてくれた。その温もりに触れた途端に、私の目から大粒の涙が溢れた。

「……っ、」
「泣くな。助けに来てやったんだから」
「はい、」
「脱出するぞ」
「……まだ、しっかり体に力が入らないんです。ですから──」

　ちょっと待って欲しいと言う前に爆豪さんは私を軽々と抱き上げた。横抱きにされたことで爆豪さんの顔がすぐ近くに迫り、思わず凝視してしまった。ああ素敵。かっこいい……。

「オイ」
「はい？」
「……誘拐されてたわりに随分と余裕じゃねーか」
「は、はは……」

　思考が表情に出ていたようで、私の考えていることは筒抜けだった。呆れたように呟く爆豪さんに私は笑って誤魔化す。

　しかし爆豪さんの表情から険しさは消えない。あれ？だんだんと近づいているような……。

「あ、あの……」
「ちょっと黙ってろ」
「え！あ……ん、」

　鼻先が触れそうな位置まで近づき、視界は爆豪さんで埋め尽くされていた。

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