愛することすら、許されない３【爆豪勝己】 (ページ36)

今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:64,299 hit

★★ ページ36

.

　頭の中にいたAの兄たちの顔を振り払い、思考を現実に引き戻す。

「ってことは。ずっと日本にいるってことでいいんだな？」
「はい。今のところそのつもりですわ」
「ふぅん」

　数日でＩ・アイランドにとんぼ返りってわけじゃないと知って安心した。いつでも会おうと思えば会える。そんな距離にAが戻って来たのだ。

「明日は空いてるか？」
「明日は……お父様とお食事の予定を」
「あっそ。じゃあ明後日は？」
「明後日は一幸(かずゆき)お兄様とデートの約束が」
「……。そんじゃその次は」
「百夜(びゃくや)お兄様と……そして次の日は十和(とわ)お兄様とお約束してますわ」
「……」

　途中から嫌な予感はした。百日紅(さるすべり)家の男どもはとにかくAを構いたい。こんなに早く予定を固められるのは予想外だったが。

「だ、だって！約束しないと今日は出掛けてはいけないって……。私、どうしても早く勝己さんに会いたくて……っ、すみません」
「あー……なるほど。別に責めてるわけじゃねぇ」

　明日から四日間はあいつらに独占されると思うと憂鬱になる。俺がこいつを独占できるのは五日後ってわけか……いや。

「今日はどうだ？これから時間あるか？」
「はい。……あ、でも夕食までには戻らないと。今晩はお父様たちとディナーの約束を」
「あ？」
「へ？」
「そーだよな。Aはオトーサマやオニーマサが大事だもんな。俺よりも」
「え、あ……す、すみませんっ！拗ねないでください！！」
「拗ねてねぇ」

　色々と先を越されたからって悔しいわけじゃねぇ。決して。

「あの……ちょっと待ってくださいね」

　あまりにも俺が不機嫌さを醸し出したから、Aは慌てて鞄からスマホを取り出した。そしてどこかへ連絡した。

「あの、お母様？今夜のディナーなんですけれど……え？あ、はい。そうです。今は勝己さんのところに。はい。はい。え？──いいんですか？ありがとうございます！ええ。もちろんですわ。…………え？あの、ちょ──お母様！？」

　母親に連絡を取ったらしいAはどんどん声を明るくしていった。しかし、最後はなぜか焦った声で母親を呼んでいた。会話の聞こえない俺は、通話を終えた画面を凝視しているAを見つめているしかなかった。

.