愛することすら、許されない３【爆豪勝己】 (ページ13)

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★☆　あの場所を目指してページ13

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　そして土曜日はやってきた。イベント会場を借りて開催された握手会は、想像以上に賑わっていた。

「お疲れ様〜。轟君の列、すごかったね」
「緑谷の方こそ。お前の対応にファンはめちゃくちゃ喜んでたな」

　握手会は前半と後半に分かれていて、前半組に割り当てられていた僕と轟君はつい先ほど終えたところだ。

「次は後半組か。爆豪の列、すげぇな」
「うん。僕たちより早く来て活躍してたからね」

　あと数分で後半組が始まる。Aさんは列のどの辺りにいるんだろうか。………………あれ？ダイナマイト列を最前から順を追って探したけど、Aさんの姿は見当たらなかった。

　え、なんで？来るって言ってたよね？どうしよう。かっちゃん、Aさんのために握手会の参加をＯＫしたのに。

「おい、緑谷アレ」
「ん？」

　轟くんが少し離れた場所を指差して教えてくれた。いた！よかった！

「Aさ〜ん！」
「え？……あ、緑谷さん……と、ショートさん？」

　今日の仕事は終わったので僕たちは私服に着替えていた。バレないように深く帽子を被っているから、Aさんは僕だとすぐに気づかなかったらしい。

「並ばないの？」
「……はい」
「え、どうして！？あんなに楽しみにしてたのに！」
「だって。憧れのダイナマイトに握手してもらえるなんて……緊張して足が竦むといいますか、体の震えが止まりませんっ」
「……」

　轟くんは何か言いそうだった。多分僕と同じことだろうなぁ。握手くらい、いつでもしてくれるだろうに……と。

「そろそろダイナマイトの握手列締め切りまーす」
「え゛！？」
「ええ！？」

　長蛇の列の最後尾にいるスタッフの声に、僕とAさんが同時に顔を上げる。

「どっ、どうしましょう緑谷さん！私、まだ心の準備がっ」
「時間なら充分あるだろ」
「へ？」

　慌てふためくAさんの手を取って、轟君が列に向かって歩き始めた。まさに今締め切られようとしたギリギリに滑り込んだ。

「ああああ……」
「一緒に並んでやるから、まずは落ち着け」
「は……はい！ありがとうございます」
「ん」

　轟君の手がAさんの頭に乗る。まるで子供をあやすように。Aさんは安心したように微笑んだ。轟君、なんて優しいんだ……。

　……でもね。
　僕はいわれのない悪寒をこの身で感じとっていた。
　なぜなら見てしまったのだ……。かっちゃんの表情を。今にも人を殺しそう赤く鋭い眼差しを。

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