愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ9)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:82,201 hit

★★ ページ9

.

　ガラス越しに目映い光が入り込んだと思えば、時間を置かずに響く雷鳴。それに合わせてAは体を震わせ、逃げるように俺に抱きつく力を強くした。

「A？」
「──ぁ、ごめ、なさ……きゃっ！！」
「あー……いいからしがみついとけ」

　小さな体を包み込むように背中に腕を回し軽く叩いてやれば、体の震えはマシになった。──かのように見えたが、それでも雷鳴が響くたびに肩が大きく震えた。

　エレベーターが最上階に到着し、静かなフロアに出るとAは俺から体を離した。

「すみません、もう大丈夫です」
「……」

　とても大丈夫と言えるような顔色ではないのに「こちらです……」と自宅の扉の前に向かう。気丈に振る舞っているが、手先は震えていた。なかなか扉のロックが開けられない。

「どうぞ」
「雷、怖いんか」
「いいえ」

　ようやくロックが解除できた扉を開けて、俺を部屋の中に促す。どうにも様子がおかしいと真っ先に浮かんだ疑問を投げかけたが、返ってきたのは否定の言葉だった。

「雷は怖くありません。ただ……きゃあっ！！」
「オイ……っ」

　リビングに入った途端、また光とともに雷鳴が響いた。近くに落ちたのか、照明がチカチカと点滅してリビングを不気味に演出した。

「うぅ……」

　Aはその場にしゃがみ込んで両手で耳を塞いでギュッと目を閉じた。

「──チ……ッ」

　俺は部屋中の窓のシャッターとカーテンを閉めた。解放感のある大開口の窓は、晴れの日は絶景を拝めるだろうが、今のAには最悪の状況だった。

「これで少しはマシだろ」

　音は完全に遮断できないが、さっきよりかはマシだろう。フローリングに座り込んでいるAは、目の端に浮かんだ涙を拭いながら安心したように息を吐いた。

「立てるか」
「はい、ありが──……ひゃぅっ！！」

　Aを立ち上がらせてソファーに誘導し、座ろうとした時にドドン……ッと雷が落ちる音がした。その音に弾けるように支えていた俺に抱きついた。

「すみません……っ」
「あ？別に──」
「ごめん、なさい……っ、ごめ……なさ……──」
「A？」
「──……、……い」

　小さく何度も繰り返される謝罪。それは俺に向けたものと思ったが、直感的に違うと感じた。俺は弱々しく涙を流すAを抱きしめた。

.