愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ40)

今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:82,083 hit

☆☆ ページ40

.

　人生で初めてのプロポーズ。夢にまで見た大好きな人からのプロポーズ。

　だけれど、私はそれに応えることはできない。

「すごく……嬉しいですわ。私にはその言葉だけで充分……」
「なん、だよ。それ」

　部屋の薄暗さに目が慣れてきた。私を見下ろす爆豪さんの表情が歪められるのを、涙で滲む視界に捉えることができた。

「じゃあなんで泣いてんだ」
「すみません。これは……だって、ダメなんです」
「何がダメなんだ。はっきり言え。俺か？俺に何か──」
「違います。これは私の問題なんです」
「……なんの問題があるってんだ」
「話しますから……一度体を起こさせてください。ちゃんと顔も見れないままじゃ……」

　やんわりと胸を押し返すと案外すんなりと上から体を引いてくれた。

　私が体を起こしてベッドの上で座り直した。自由になった手で涙を拭っていると、爆豪さんはベッドサイドにあったライトに手を伸ばした。パチッと音を立てて小さな光が灯る。明かりがついたことではっきりと見えた爆豪さんはむすっとした表情をしていた。

「で？」

　──と、苛立ちをわずかに含めた声で詳細を促した。

「あ、はい……」

　すごく話しにくい。顔が見えていなかった方が良かったのかもしれないと後悔しながら、私は受け入れられない理由を伝えた。

「私、大学に入ったと同時に企業と契約しまして……、」
「契約？なんの」
「研究や発明に必要な部品や材料を無償で提供してくれる代わりに、留学期間を終えたらその企業で働くというものです」
「ああ……よくあるやつな」
「私は留学を終えた後、三十年はそこで働くことになり、このＩ・アイランドから出られません」
「はあ！？」

　爆豪さんは目を見開いて「さん……じゅう、ねん……」と口を動かした。その目がピクピクと動きながらだんだん釣りあがっていく様子を見て身構えた。

「なに勝手にそんな契約してンだよ！」
「だ、だって……っ、特殊な材料はすぐには手に入りませんもの」
「てめーなら自分で作れんだろっ」
「どれもこれも作ってられません！」

　入手ルートが限られている学生にとってはかなり美味しい条件だ。

「…………どうにもできねーのかよ、その契約」
「それなりに恩恵を受けてきたのでそれを今更はちょっと……」
「あー……クソ、なんだそりゃっ」

　爆豪さんは長い溜息をつきながら頭を抱えた。

.