愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ39)

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☆☆ ページ39

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　逃がさない。

　その紅い瞳に宿る意思を強調するかのように、掴まれたままの手に力が込められる。薄暗い中でその手の主を見上げるが表情は読み取れなかった。

「爆豪、さん……？」

　少し開いた部屋の扉から入り込む廊下の灯りだけが、視界に光を取り入れる手段だった。その中でもはっきりと感じる二つの“赤”。

「どうしたらお前は俺の気持ちに応えるんだ？」
「え？」

　顰めるように双眸を細めた彼は私に問いかけた。

「お前の気持ちを聞かせろ」
「私(わたくし)の……気持ち……」

　率直な要求には私は戸惑うしかなかった。

　以前に私は自分の意志を告げている。けれど、私が口にしたのはその場凌ぎのもので本心ではない。逃げるための言い訳。

　私の心はすべてダイナマイトに捧げていますの……──と。

　Ｉ・アイランドへ来てから何度か交際の申し込みを受けた。断りたくて、とっさに言ってしまった言葉がそれだった。その言葉は思っていたよりも効果的で、私は何度もその言葉を口にした。

　自惚れに聞こえるかもしれないが、私はその断り文句に言い慣れてしまっていた。だから爆豪さんの時も、とりあえず断らなければという意思が働いてこれを口にしたのだ。それを本人に言っても効果があるはずがないのに。
　

　今思うとなんてまぬけなんだろうと笑ってしまう。

　しかし爆豪さんはその素っ頓狂な発想を真に受けて混乱した。だから私はそれを利用した。あくまで好きなのは『ダイナマイト』であると。

「お前、デクに言ってたな。俺にふさわしくないって」
「聞いて……、」
「ふざけんな。それを決めるのは俺だ！」
「……だって」

　私は１人のヒーローの命を奪った。直接的でないにせよ、原因を作ったのは幼い頃の私だ。私のせいで彼は死んだのだ。

　誰かを愛することも、誰かに愛されることも許されてはいけない。彼を差し置いて幸せになってはいけない。

　なのに、どうして──……

「俺の側にいろ」
「でも」
「でももだってもいらねえ。お前はただイエスと答えればいい」
「そんな横暴な──」

　赤い瞳と視線が交わる。

「A、俺と結婚しろ」
「……っ、」

　込み上げる感情は涙とともに溢れ出した。私も……。爆豪さん、あなたと一緒にいたい。だけど──……

「ごめん、なさい」

　それが私から言える、精一杯の言葉だった。

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