愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ34)

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★☆ ページ34

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　かっちゃんのおかげで僕たちは安全な塩おにぎりを口にすることができた。

「……あら？何か落ちてますよ」

　リビングに戻ったと同時にAさんは床に落ちていたものを拾い上げた。

「……『百日紅家長女誘拐事件の犯人が逃走。捜索中』？」
「え！？」
「な──、」
「あああ！そ、それはっ」

　上鳴君が日本のニュースをまとめておくようにと言われて作っていた資料だ。運悪く例の犯人逃走の事件が一番手前にあったらしい。

「……」

　Aさんの表情に陰りが差す。動揺させないように何も言わないでおこうと決めたのに。とんだ失態から本人の目に触れることになってしまった。

「上鳴ィ！！てめえっ！」
「ぎゃひィイイイッ！ギブギブ！！ぐえっ」
「かっちゃん、それ以上はやめてあげて！」
「そうですわ！このままでは上鳴さんが大変なことに！」

　かっちゃんが上鳴君をプロレス技で締め上げていた。ミシミシと音が耳に届き、僕とAさんは慌てて止めに入った。

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　数十分後。どうにか場を収めることに成功した。上鳴君は床に倒れている。

「ひでーよばくごー……こんどぜってーしかえししてやりゅからにゃー……」

　 ──と恨み言をこぼしている。呂律が回っていない。酔いとかっちゃんからのダメージで伸びていた。

「爆豪さーん。大丈夫ですか〜？」
「んー……わーってるわ……」
「？」

　一方、技を仕掛けていたかっちゃんも酔いが回って潰れていた。今のはAさんの声に反応したわけではなく、おそらくただの寝言だ。

「二人のせいで随分散らかっちゃったね。僕、このあたり片付けるよ」
「あ、すみません。私(わたくし)も手伝いますわ」
「いいよいいよ。かっちゃんが起きないようにそっとしてて」

　かっちゃんは現在、柔らかいカーペットに座るAさんの膝を枕にして横になっている。僕が上鳴君を、Aさんがかっちゃんの体を引っ張って引き離した時に勢いで倒れて、今の体勢になった。

「ヴィラン顔ヒーローと言われていても、寝顔はこんなに可愛いんですね」
「かわ……いい……？」

　かっちゃんの髪を撫でながらAさんは信じられない言葉を口にした。転がっている缶を拾い上げながら僕は壊れた人形のようにその言葉を繰り返した。

「ええ。そのギャップがまた良いですわ……」
「あのさ──」

「──Aさんって、かっちゃんのことどう思ってるの？」

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