★★ ページ11
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「オイ、ゴーグル女。アイツはなんであんなんなんだ」
「はい？」
「アイツ、俺のこと好きだろ」
「ええ。それはもう」
「なのになんであんな態度を取るンだよ。マジで分かんねぇ」
「Aは不器用ですからね……。いえ、頑固というべきでしょうか」
「あ？」
「あの子には夢があります」
「科学者になるっつーアレか？」
「よくご存知で。では、科学者になりたいと強く思うようになったきっかけは？」
「……家の仕事を手伝いたいとかじゃねーのか？」
「ふむ、そこまでは知らないということですね」
「あ゛あ！？違ぇのかよ！じゃあなんなんだよ！？」
「それはAの口から聞いていただきませんと。本人を差し置いて私が軽々しく話していい内容ではありませんので」
「は？」
「ふふ。日本ではここまで充実した実験施設はありませんし、発明に理解のある環境ではありませんからねぇ。私はこの地から一生離れるつもりはありません！」
「オイ、さっきから何をわけの分かんねえことを──」
「Aもそのつもりでいます」
「あ？」
「この意味、お分かりですね？」
「……」
★
それは数日前の会話。購買に行ったというAを待っている間に、ゴーグル女と話した内容の一部だ。一言一句違わず夢の中で再現されていた。……夢？
「……いつの間に寝たんだ？」
目を開けると艶やかな黒髪とフローラルの香り。自分が抱えている女の髪に顔を埋めていた俺は、状況を把握するため周囲を見渡した。
……そうだ。思い出した。「お食事の準備をしますので、寛いで待っていてください」と言うばーさんの言葉に甘えて、俺はAを抱えながらテレビを見ていた。夜勤明けだったこともあり、うっかり眠ってしまっていた。このソファーの座り心地が良すぎるのも原因の一つだ。
「んぅ……」
「起きたか」
「ばく、ごうさん？」
とろんとした目で見上げるAの表情には怯えや恐怖はなかった。
「まだ……降っているんですね」
「あ？……ああ、雨か。今夜は止みそうにねえな、怖いか？」
「……」
「A？」
まだ雷雨が続いていることを知ったAが心配だった。また怯えるのではないかと。しかし俺の心配とは裏腹に、顔を上げたAの表情は落ち着いていた。
「…………爆豪さんが一緒なら、大丈夫ですわ」
「そうか。安心しろ、俺がそばにいてやる」
「はい。
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作者名：瑪瑙 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2019年4月1日 22時
