愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ17)

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　目を開けると、見慣れた天井がぼやけた視界に映った。私はお気に入りの抱き枕を抱えて自分のベッドの中にいた。

　いつも真ん中で寝ているのに今日は珍しく端の方で寝ている。そういえば……昨日はどうやってベッドに入ったんだっけ。記憶がないということは、途中で眠ってしまったのだろうか。

　いつかのように爆豪さんに運ばれて一緒に眠ったのか……。なんて考えながら寝返りを打ってみたが、

「……あれ？」

　私の行き先を阻む障害物はなかった。

「……」

　爆豪さんが隣にいるものだと期待した自分に恥ずかしさを覚える。……でも、誰もいなかった割には不自然に皺ができているような気がした。

　シーツに手を這わせると、かすかな温もりがあった。その温もりを逃さないように、爆豪さんがいたであろう場所に自分の体を重ねて目を閉じた。

☆

「──……、……A」
「……ん？」

　浅い眠りの中、耳元で囁かれる声で意識が浮上する。目を開けて見上げると、爆豪さんはベッドに手をついて私を見下ろしていた。

「……ばくごう、さん？」

　爆豪さんはヒーローコスチューム姿だった。一瞬夢かと思ったが、私の頬を撫でる手の感触は本物だった。私が曖昧に呼んだせいか、目元のヒーローマスクを指に引っ掛けて素顔を晒した。

「起こして悪ぃ。救援要請が来たから出るわ」
「雨は……」
「まだ降ってる。もう雷は鳴ってねえから安心しろ」
「そうですか」
「原因の装置は停止できたみてーだが、午前中はまだ天気が荒れるらしい。警報が解除されるまで家から出んなよ」
「はい」

　頷いて横になっていた体を起こす。ベッドから足を降ろそうとすると、肩に手が置かれて制された。

「見送りはいらねぇから」
「そんなわけにはっ、あの……昨日はありが──……んっ！？」

　お礼を言うはずだった唇が何かで塞がれた。その“何か”は考えるまでもなく、爆豪さんの唇だと理解できた……が、そこで私の思考は停止した。

「礼はこれでいい。んじゃ、いってくるわ」
「え……っあ、はは、はいっ。いって、ら……しゃい」
「ん。まだ早えから寝とけよ」

　あまりに突然だったので爆豪さんのペースに乗せられてしまい、私の口は無意識に見送りの言葉を紡いでいた。爆豪さんは満足そうに笑い、手を上げて扉の向こうに消えていく。

「うぅ〜〜〜〜……」

　ふらふらと力が抜ける体をベッドに横たわらせたが、眠気はとうに吹っ飛んでいた。

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