愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ10)

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☆★ ページ10

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　ニュースの映像を見ていても思ってましたが、本当に気性が荒いですね。怒鳴り続けて息が上がってます。本人も自覚しているのか「ふぅ……」と長く息を吐いて冷静になろうと努めていました。

「おいゴーグル女。それ、なんだ？」
「はい？ああ……、」

　ダイナマイトが私の手の中にあるものを指差して言いました。Aが落としていったものです。

「これはAのお気に入りのクッションです」
「あいつの……お気に入り？」
「ダイナマイトをイメージしたカラーで随分前にゲットしたヒーローグッズだそうです。愛用してます」
「愛用？ふー……ん。それ寄越せや」
「あ」

　なにやら意味有りげに呟いたダイナマイトは、私の手の中からクッションを搔っ攫っていきました。そして──、

「オイA。１０秒以内に出てこなかったらこのクッションを爆破すっぞ」
「な、なんですって！？」

　今まで無視を決め込んでいたAが扉の向こうで戦慄の声をあげた。さすがに聞き捨てならなかったようです。お気に入りですもんね。

「じゅーう、きゅー、はーち」

　ダイナマイトが抑揚のない声でカウントダウンを始めました。まあ冗談でしょ──……あれ？

「なーな、ろーく、ごー」
「あの……さすがに冗談ですよね？本気に見えるんですけど」
「あ？出てこねーってことはいらねーってことだろ。だったら爆破されよーが別に──」
「よくありませんわっ！！」

　私たちの会話で彼の本気度を察したのか、慌てた様子でAが飛び出してきた。こんなクッション程度で？と思いますがAにとっては大切なものらしいです。

「──はッ、やっと捕まえた」
「ぶふッ、」

　ダイナマイトは仕掛けた罠に獲物がかかったと言わんばかりに笑みを浮かべ、両手を広げてAを迎え入れる。まさかこんな間近で控えているとは思わず、逞しい胸板で受け止められたAはブサイクな声を出していた。

「よう、A」

　ぷは、と顔を上げたAを見下ろし、ダイナマイトは愉しそうに呟いて背中に手を回した。

「な、なな、なんで爆豪さんがここに──」
「あ？そんなン──って、オイ！」
「うきゅー…………」
「変な声出して倒れんなっ！！Aっ、起きろや！」

　ダイナマイトの腕の中でAは力が抜けたようにへなへなと足元から崩れていく。完全に目を閉じて、彼の呼びかけにも応えません。

　あー……どうやら限界のようです。

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