愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ41)

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「すみませんっ、これから大事な用がありますので！！」

　足に力を入れてその場で踏みとどまり、精一杯の勇気を振り絞った。立ち止まってくれた男を見上げて伝える。

「どうしても、どうしても外せないんですっ！ですから、あの……」
「あー……うん……そっか。いきなりだしな。悪い」
「い、いえ……」

　理解してもらえてほっとする。しかし私の腕を掴む男の力は緩まない。がっちりと掴まれたままだ。

「じゃあ、明日は？」
「え……っ」
「あ、金曜の夜とかどう？」

　あろうことか男は約束を取り付けてきた。誘い自体を断っているのに、自分の曖昧な言い方が原因で“今日は無理”と勘違いされたらしい。

　どうしようと頭を悩ませる。掴まれた部分に針を創造して離してもらえたところで全力疾走という方法が頭によぎった。もうそれしかない。彼には不快な思いをさせるだろうが許してほしい。すみません……っ！と心の中で謝罪して個性を発動させようとした時だった。

「は！？オイ、なんだよっ」
「……」

　室内なのに帽子にサングラスといった見るからに怪しい風貌の男が、私の手を拘束する男の手を掴んでいた。

「なんか用か？っつーか離せ──いだだだだ……っ」

　痛がる男の声と同時に私の手が解放された。どうやらこの人は私を助けようとしてくれているようだ。見上げると、深く被った帽子からはみ出た髪質と色でその正体が分かった。

「爆──」

　サングラスの端から覗く赤い瞳が、名前を呼ぼうとした私を制した。はっとして言いかけた言葉を止め、口を閉じる。危ない危ない。何のための帽子とサングラスだ。

　“こっちに来い”というアイコンタクトに従って男の側から離れると、爆豪さんは男から手を離した。

「いってぇな！！なにすんだよっ！」
「……」
「オイッ！てめーなんか言えよ！通報すっぞ！」

　男は声を荒げて爆豪さんに掴み掛かった。

「や、やめてくださいっ」
「うるさいっ」
「きゃ……っ」

　無抵抗の爆豪さんの胸ぐらを掴み上げる男を止めに入ると、「邪魔だ！」と強い力で押し退けられた。私は踏ん張りがきかず、勢いのままに後ろに倒れていく。

「……ッ、てンめ──」

　爆豪さんの地を這うような低い声を耳にしながらスローモーションで天井を仰いでいると、誰かに肩を抱くように支えられた。

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