愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ36)

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「ごきげんよう爆豪さん。わざわざ足を運んでいただいたところ恐縮ですが、ここは関係者以外の立ち入りを禁じております」

　翌日、再び研究室へと訪れた俺に対し、Aは極めて他人行儀に出迎えた。昨日の申し訳なさそうな態度は幻だったかのように。

　原因はわかっている。というか、それ以外ない。俺の告白だ。二度目の告白をした直後からAの態度は冷たいものに変貌していた。

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　昨日の俺は甘かった。あの流れならAは動揺だったり恥ずかしがったり、そういう反応だと思っていた。

　──しかし、実際のAは人形のように表情を消した。ケーキが運ばれるまで一切口を聞かず、運ばれてきてからも黙々と食べて店を出た。その後も一切、口を開かなかった。だったら俺から話せばいいと思ったが、会話の糸口をつかめないまま大学に戻ってきてしまった。

　大学の前でAは最後に一言だけ、『ここから先は関係者以外は立ち入らないでください』と、ついさっき言い放ったものと同じセリフを口にして俺を追い払った。

「──昨日も申し上げたと思いますが」

　そして本日、態度も軟化しているだろうという期待は見事にはずれた。

「時期も時期ですし、こんなところをウロウロしているとスパイと間違われますわよ。用がない限りは──……」
「あン？用ならちゃんとあるわ」

　俺はAの言葉を遮って、手に持っていた鞄を持ち上げた。

「ん」
「なんですか……あ」

　俺が差し出したカバンの中には、ヒーロー活動の時に使用する手榴弾型の籠手。Aが制作し、卒業の日にコイツの兄──十環(とわ)から手渡されたものだ。

「俺がここに来た目的は、これのメンテナンスだ」

　ちゃんと正当性のある理由を提示し、これで文句ないだろ？と視線を送った。Aはその視線から逃げるように目を背けた。

「……別に、私(わたくし)じゃなくてもお兄様や他の方に頼めば……」
「定期点検は十環にしてもらってる。それとは別に、欠けた部分や傷が入った箇所の修理はお前じゃないとダメなんだとよ」
「……」
「ずっと使ってっから、そこら辺にガタがきて調子悪く感じる時があるんだ」
「……わかりました」

　俺の言葉に納得したのかAが折れた。

「使ってくださってたんですね……これ」

　鞄の中に収められている籠手に手を伸ばし、まるで子供を撫でるかのようにそっと触れ、柔らかい笑みを浮かべた。

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