愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ8)

今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:137,908 hit

☆★ ページ8

.

「Aー。ちょおっとだけで良いので、起きてもらえます？シャワーは諦めましたので、せめて向こうで横になってください」
「んー……」
「そんな格好で寝ると本格的に風邪ひきますよ」
「むにゃ」

　会話とも言えない拙い返事にため息をつきつつ、つけていたゴーグルを外す。もうダイナマイト作戦は使えませんし──……どうしましょう？

　と、そこで研究室の扉が開いた。

「──おや？あなたは……」

　私は思わず個性(ズーム)を使用して、そこにいる人物をまじまじと観察した。使用するまでもない距離なんですが、まぁ驚いたんです。ちょっと動揺したんです。

　なんと、ダイナマイトがいるではありませんか。

　興味のない人物の顔と名前が覚えられない私が、なぜ彼を見て瞬時に判断できたのか。それはAの影響です。

　彼女はダイナマイトの画像やニュースをチェックしては、私に報告してくるのです。ヒーローマスクがなくても彼だと分かるくらい、画像を見させられた結果がこれです。

「──オイ！そいつ、どうしたんだ！？」
「はい？」

　ダイナマイトは素早い動きでこちらへと距離をつめる。踏んだらそのダメージでしばらくは動けないであろう部品が散らばる床を難なくクリアする様子は、さすがヒーローと言いますか。

　最後に作業台を軽く乗り越えてAの前に着地し、そのまましゃがみこんだ。

「しっかりしろっ、大丈夫か！？」
「あ、大丈夫です。その体勢で眠っているだけですので」
「……あ？」
「むにゃ」

　私が状況について説明したと同時にAの顔を覗き込んだダイナマイトは、間の抜けた声を出した。

「ンだよ、びっくりさせんなや……」

　肩の力を抜いてため息をつくダイナマイトは新鮮ですね。ヒーローらしからざる態度でもこういうところはちゃんとヒーローに見えます。

「んぅ、……あら？」

　ダイナマイトの声に反応したのか、一度眠りに落ちたAが目を開いた。さすが本物。Aの意識を引き戻せるなんて素晴らしいです。

「……」
「……」

　寝惚け眼のAは何度も瞬きを繰り返しながら、目の前のダイナマイトを見つめていた。ダイナマイトもその視線を逸らさずに受け止めている。

　見つめ合う二人。まるで時が止まっているよう──、

.