愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ4)

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★★ ページ4

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「もう行くのかい？」
「あ？」

　全ての準備を終え、国際空港のロビーで搭乗時間を待っていた俺のもとに一人の男が現れた。

　俺に声を掛けた男──百日紅(さるすべり)十環(とわ)は俺の前に立ち、両手を腰に添えた。

「Ｉ・エキスポの開催はまだ二ヶ月先だよ」
「俺はＩ・エキスポに行くわけじゃねぇ。分かってんだろ」

　本来ならばＩ・エキスポの開催に合わせて出発するのだが、俺は二ヶ月も早く申請した。当然のとこながら、開催元から「なぜ？」と説明を求められた。俺の籠手をメンテナンスできる技術者がＩ・アイランドにしかいないと告げれば、簡単に許可が下りた。まあ、目の前にいるこの男の口添えがあってこそなのだろうが。

「Aによろしく。本当は俺も会いにいきたいけどねぇ」
「このシスコンが」
「上の兄たちに比べたら俺は可愛いもんだよ」

　百日紅家の力を使えば参加なんて造作もないが、仕事の都合上どうしても日本を離れられないらしい。

「あの子の気持ちに気づかずに留学を強く勧めてしまったから、それがちょっと心残り。君に渡してほしいと完成した籠手を託された時に気づいたんだよね」

　俺の足元にあるコスチュームを入れた鞄を見る。ごめんね、と謝るかのように。

「快く引き受けずに無理矢理引きずってでも、最後に君に会わせてやれば良かった。そうすれば君の誤解も解けて、Aは心置きなく出立できたかもしれない」
「……あいつが俺に会いにきていたら、俺は全力で行くなと引き止めてたかもしれねーぞ」
「うん。それでも良かったと思う。Aの気持ちが君の希望に添うものであれば」
「チ……ッ」

　過ぎたことをぐちぐちと。この男は会った時から飄々とした態度で接してくる。何を考えてるのか分からねえから厄介だ。

「まぁでも君のことなんか忘れて、現地の男とよろしくやってるかもしれないけど！」
「あ゛あ！？ンだとォ！？」
「っわわ、冗談だって！」

　胸ぐらを掴み上げれば十環は降参のポーズをとった。つかみどころのない笑顔を浮かべて足をぷらぷらさせている。

「そろそろ苦しいんだけど……」
「……ふんッ、」

　年上の威厳もない男を地面に降ろして俺はソファーに座り直し、搭乗のアナウンスを待った。

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