☆★「なんだそのだせぇ名前の学校」 ページ5
.
かっちゃんの様子がおかしい。ぼーっとしていると思ったら、突然怒り出して何もない空間を睨みつけている。
同じクラスになってまだ日が浅いクラスメイトたちは、「何があったんだ？」と気にしながらも聞き辛そうにしている。かといって僕が話しかけてもきっと逆効果だ。
ここは放っておくのが教室内の平和のため──……
「オイ、クソデク」
「うわっ！？な、なに……かっちゃん」
「ネクタイに星っぽい校章のついた学校、知ってるか」
「星……
神妙な顔つきで話しかけてきたかっちゃんの話題は、『国立の雄英、私立の星麗』と言われるほどに、有名プロヒーローの輩出数が多い学校のことだった。
「あ？なんだそのだせぇ名前の学校」
「かっちゃんが聞いてきた学校の名前だよ。幼等部から大学部までの一貫教育でヒーロー科もあるんだ。雄英の滑り止めに受ける人もいるみたいだけど知らない？」
「知るわけねぇだろ！俺に滑り止めなんざ必要ねぇわ」
かっちゃんは興味があるような、ないような、どちらともとれない反応で僕の話を聞いていた。こんなに大人しく他人の……特に僕の話を聞くかっちゃんは珍しい。
「星麗学園と言えばさ、幼等部から通ってる子はマジでめっちゃお嬢様なんだってな」
「マジで！？」
僕らの会話を拾った上鳴君がまた違う視点で話を広げていった。その話に瀬呂君が食いつく。
「なんか有名人とかすんごい金持ちの子息令嬢が通ってるって！」
「え、でも普通の家庭でも星麗卒のヒーローいるじゃん」
「高等部から編入できんだって。定員の関係で雄英に入れなかった奴はほぼそこに行くらしいぜ」
「お嬢様と授業かぁ……」
上鳴君と瀬呂君はぽや〜んと何もないところを仰いでいる。お嬢様にキャーキャー言われて授業しているところでも想像しているのだろうか。
「……クソデク」
「な、なに？」
「その学校の場所、教えろ」
「え？なんで？」
「いいから！！」
理由を聞けばギロリと睨まれてしまった。
「せ、星麗学園は門を出て左をず〜っと歩いていけば辿り着ける……かな。地図上では隣だけど、両方とも敷地が膨大だから一駅分くらい距離があるよ？」
「……あっそ」
それだけ言ってかっちゃんは前を向いた。周囲の音が聞こえないかのように、静かに窓の外を見つめていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 645人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
