★★「……多いのか」 ページ37
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俯くAを俺はただ見下ろしていた。
新調したドレスに合わせて選んだであろう靴は、ヒール部分が随分と高い。大人びたドレスが少しでも映えるようにと、慣れない靴を履いて出席したんだろう。こんなパーティごときに気合いを入れて、何になるんだか。
「足、痛むんか」
「……少し」
Aの足には湿布が貼られていた。「少し」と答えたが相当痛いというのは、見ただけで分かる。俺はため息をつきながら、しゅんとしているAに背を向けてしゃがんだ。
「乗れ」
「え？」
「外まで連れてったるから」
「あの、でも……」
「あ？」
一度立ち上がってAを振り返る。捻挫しているとしても、背に乗るくらいはできるだろう。
「どうし──」
「A！」
他にも怪我しているところがあるのかと尋ねようとした時、Aの名を呼んで近寄ってくる女の声が耳に入った。
「隊員の方に話したのですけれど、人手が足りないそうで……。まず重傷者の搬送から優先するそうですわ」
「そう……ですか」
「ところでこちらの方は？」
用件を終えた女は俺を指してAに尋ねた。
「あ、
「まあ、それは失礼しました。
「……多いのか」
口にしてから気づいた。なんで俺はそんなことを聞いているんだ。別に興味ねえだろ。
「多いです。高校に入ってからは特に」
女はきっぱりと答えた。眉根に力が入っていくのを感じる。もう一度Aの足を見た。ああ、そうか。そこでようやく俺は気づいた。
Aに近づき、足を隠すスカートの裾を少し持ち上げた。
「爆豪さ──ええっ！？」
「靴擦れしてまともに立てねえならそう言え」
両足の踵には絆創膏が貼られていた。馬鹿か、とため息交じりに呟き、それを驚くAの膝裏と背中に手を回して抱き上げた。
「な、何を……っ」
「あ？運んだるっつってるだろーが。背負われんのが嫌みたいだったから、こっちにしてやったんだわ」
「あ、あれはそう意味ではなくて……！うぅ……」
俺が歩き出したので抵抗を諦めたのか、Aは真っ赤にした顔を伏せた。心配そうに見守る友人の視線を気にしているようだった。今まで触れても顔色一つ変えなかったのに。
なぜだろう。俺は今、すごく気分が良い。
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
