０９★★「私がいなくて寂しいですか？」 ページ28
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期末テストが終わった翌日。休日でもあるのに関わらず、俺は雄英近くの図書館に顔を出していた。朝起きて、取り立ててすることもなく。かといってＡ組どもの買い物につき合うなんて馬鹿げている。家に居たら居たで母親が煩い。
とりあえず涼しい場所と考えて、まずここが思い浮かんだ。
☆
「まあ、偶然ですわね。爆豪さん」
「……」
Aが分厚い本を抱きしめながら「ごきげんよう」と挨拶した。まさかいるとは思わず、俺はその存在に目を見張る。
「……休みの日もここにきてんのか？」
「いえ、今日だけです。夏休み前に調べものをしておきたくて」
「またでっけぇ本を……」
「サポートアイテムの歴史について調べていたんです」
その本は随分と重いのか、Aの腕の中でずるずると少しずつ下がっている。落としてしまう前にその腕から取り上げた。
「ありがとうございます」
「机で見んのか」
「いえ、自宅に持って帰ります」
「この重い本をか？」
「迎えを呼ぶので大丈夫ですわ」
「あっそ」
まだ借りたい本があるらしく、似たような表紙の本を棚から引き抜いていた。
「１冊ずつでいいんじゃねーのか」
「いえ、できれば明日までに全部目を通しておきたいんです。明後日には日本を発つので」
「は？旅行にでもいくんか？」
「はい。ちょっと海外へ。夏休みの後半までは帰ってこないかと」
「……チッ、これだから金持ちは……」
「お土産買ってきますから」
楽しみにしておいて下さい、だと。俺たちが林間合宿で特訓してる間に海外で旅行かよ。しかも長期の。それはそれは優雅なこった。
「私がいなくて寂しいですか？」
「……別に」
「あら残念」
からかうように笑うAの腕からまた本を取り上げて、足早にカウンターへと向かう。後を追いかけて来たAは横に並んで「あの、爆豪さん」と俺の袖を掴んで引いた。
「８月末に期間限定のヒーロー展があるのはご存知ですか？」
「ああ」
入場するにはチケットが必要。そのチケットを手に入れるには、倍率がとんでもない抽選に当選するしかない。俺も挑戦したが惨敗だった。
「特別招待のペアチケットをいただきまして」
「ンだと！？」
すぐそばで静かに読書していた人間がビクッと肩を揺らした。大きな声を出した俺にAも驚いた顔をしている。
「ご一緒にいかがですか……と」
「行く。ぜってー行く」
答えは決まっている。
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
