★★「あンの馬鹿が」 ページ22
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不愉快にも俺を呼び出したベストジーニストは、きっちりセットされた髪を撫でながら俺を見下ろしていた。
「
「は？」
「親しそうに見えたのでね」
「……別に。ただの知り合いだ」
目を合わさず、質問されたことに対して簡潔に答えた。
「そうか、では本題だ。君に彼女の身辺警護を頼みたい」
「身辺警備だァ？ なんだソレ、敵に狙われるわけでもねぇのに」
「狙われているのだよ」
「は？」
「敵ではないがね」
あり得ない仮定を提示して話を進めたつもりだったが、ベストジーニストはその仮定を肯定した。あの女が狙われている？誰に？
「この展示会は、他社にとってあまり好ましくないものらしくてね」
「……」
「コスチュームやサポートアイテムの製造において、四十％以上をこの会社が請け負っている。この展示会がきっかけとなって契約が結ばれるんだ」
「五人に二人がこの会社のもんを身につけているってことか」
「何を言っているんだ。君のコスチュームだって、この会社で製造されているものではないか」
「は？」
「そのコスチュームの胸元にある２つの丸は、この会社のデザイナーのトレードマークだよ」
俺は思わず自分のコスチュームを見下ろした。マジかよ。
「で、話を戻すが。彼女はこの一大企業の経営者の娘だ。会社のトラブルに巻き込まれる可能性がある。例えば──」
「娘を誘拐して開催を中止させろってか？」
「察しが良いな。その通りだ」
ベストジーニストは頷いた。
「現にそれらしきことを示唆した匿名の文書が会社宛に送られている」
「な──、だったら中止しろやっ！！そんなに会社の業績が大事か！？」
気づいたら俺は叫んでいた。ベストジーニストに言っても仕方がないと分かっている。だが、大人しく話を聞いていられなかった。
「百日紅氏はそんな薄情ではない。中止の案も出たが娘さんの希望なのだよ。今日の日のために、スタッフがどんなに努力してきたかを見てきたからね」
「……っ、あンの馬鹿が」
「ボディガードをつけようかと提案したのだが、遠慮されてしまってね」
会場内は警備のヒーローで溢れている。誰かしらの目には入っているだろう。しかし一人くらいは専属で付けておきたいというのが本音だ。
「君は彼女に信頼されているように見えた。……頼めるかい？」
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
