★★「目にゴミが入っただけだっ」 ページ3
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完全に油断していた。門を出た時は誰もいないと思っていたのに。どうやら涙を拭う手で見えていなかったようだ。
「あの……大丈夫ですか？」
心配そうな声で少女は近づき、見上げるようにして問いかけた。
「……っ、ウッセェ！目にゴミが入っただけだっ」
見ず知らずの女に格好悪い姿を見られてしまい、動揺した爆豪はありきたりな言い訳を口にした。俺は泣いていない──と虚勢を張って、なんでもないように振る舞う。
「そうだったんですか。失礼しました」
「……」
爆豪は目の前の少女を頭から足まで順を追って視界に収めた。セーラーカラーのブラウスに膝丈のスカート。胸元のネクタイには星と学校のイニシャルが刻まれた校章が施されていた。
(……ンだよ、他校のヤツかよ)
雄英の生徒でなくて良かったとほっとした。こんな姿、噂にでもされたら他の奴らに舐められる。まじまじと自分の顔を見上げる少女の視線に居心地の悪さを感じた爆豪は、その視線から逃げるように足を進めた。
「あ、待って下さいっ」
「うるせぇ、喋りかけんな！！」
「道をお尋ねしたいのです」
少女は去ろうとする爆豪のブレザーを掴んで引いた。
「駅の場所を教えていただけませんか？」
「駅？」
「電車の、雄英高校前です」
「──チッ、あっちだ」
「ありがとうございます」
ブレザーを掴む手を振り払いながら、顎で駅の方向を差す。どうせ無視しても何度も問いかけてくるい違いない。それはそれで面倒なので、追い払う意味で教えた。
これで解放される──と思ったが、少女はお礼を言って爆豪に並んだ。
「は？」
「実は、図書館を出てから反対方向に歩いていたみたいでして、気づいたら雄英高校の前に……」
自然と隣を歩き出した上に、聞いてもいないのにペラペラと一方的に話し出す。爆豪は思わずぽかんとしてしまった。
確かに行き先は同じだ。だからと言って同行する必要はない。なのに爆豪は少女の歩幅に合わせて歩き、同じホームで電車を待ち、同じ車両に乗って２つ目の駅で降りていくのを見送った。
「ありがとうございました」なんて言葉を笑顔でもらって。
駅に着いた時点で「あとは自分でなんとかしろ」と突き放せば良かったのに。なぜかその言葉が出てこなかった。
他人を威圧し追い払うなんていつものことだ。
なのに、それが……──
(……なんなんだ、あの女は)
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０２★★「……まさか」→← ★★「クッソ、カッコ悪ぃ……っ」
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
