０５☆★「おら、諦めろ」 ページ13
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僕は信じられない光景を目の当たりにして固まっていた。かっちゃんが……あのかっちゃんが、女の子と一緒にいた。
「どれが必要なんだ？取ったるから言え」
「いえ、自分で取りますから大丈夫ですわ」
「あ？てめぇじゃ届かねぇだろ」
「せ、背伸びすればちゃんと届きますっ！ほら、見てて下さい！」
図書館の一角で繰り広げられるやりとり。かっちゃんが女の子といること自体が驚きなのに、そこそこ親しそうに見える。しかも相手は星麗学園の生徒――……
(ん……？星麗学園ってこの前かっちゃんが色々聞いてきた！？)
高い場所にある本に、背伸びしながら手を伸ばす少女を見る。つま先だけで体を支えているため、足元がぷるぷると震えていた。見ていて危なっかしい。
「おら、諦めろ」
「い・い・え！手は届いているんです！ただ固くて……取りにく──きゃっ」
「ぉわっ」
ぎちぎちに挟まれていた本を力いっぱい引いたせいで、女の子は勢いづいて後ろに倒れた。あぶない！と叫びそうになったけど、かっちゃんが咄嗟に手を伸ばして抱きとめていた。
「ほら見ろ、阿呆」
「……びっくりしましたわ。いえ、ありがとうございます」
あのかっちゃんが……。怒鳴りつけるでもなく、無視するでもなく…………抱きとめたっ！？待って待って理解が追いつかない。
「爆豪さんがいてくださって良かったです。もう離していただいて大丈夫ですよ」
「あ、あぁ」
意外なものを目撃してしまった。女の子から手を離したかっちゃんは、自分の手を見つめながら変な顔をしていた。
「あら？」
「あ？」
「首のところ、怪我してますわ」
女の子はかっちゃんの首に顔を寄せて、まじまじと見つめていた。そんな近くまでかっちゃんに近づける女の子が嘗ていただろうか。いやいない。いなかった。今この瞬間を目撃するまではそう信じていた。
「動かないで下さいね」
そう言いながら持っていた本をかっちゃんに差し出す。何も言わず受け取るかっちゃん。そして大人しく首に絆創膏を貼ってもらっていた。
「これで良し、ですわね。ばい菌が入っては大変ですから気をつけて下さいね」
「……」
ふわりと笑う女の子と、貼られた絆創膏を撫でるかっちゃん。照れているようにも見えなくは……ない。なんだこれ。夢……？
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☆★「何ふざけたこと言ってやがる」→← ★★「ちゃんと覚えとるわ」
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
