★★「なに派手に素っ転んでんだ」 ページ11
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雄英と
昨日と同じ自習スペースへまっすぐに足を運んだ。あいつがいつも座っている席には誰もいない。なら別の場所か。端から順に席に座る人物を確認したが見つからない。あの女と同じ制服を着た生徒はいるが、あの女がいない。
(……チッ)
近くの机に鞄を置いて背の高い本棚の中へと足を踏み入れる。本を探しているようには見えない速度で本棚の間を歩いた。そこでふと思った。なんで俺はこんなに必死になってあいつを探しているんだ？
あいつだって授業が終わったら必ずここに来るとは限らない。分かっている。分かっているが心がざわつく。昨日の会話と今日の会話が頭の中で反響していた。
(……まさか俺がヒーロー科だと知って距離を置こうとしている？)
そんな、そんなくだらないことで──
「……うぉっ！？」
「きゃ……っ」
次の本棚の列へ曲がろうとして、そこから出てきた人物とぶつかった。俺は咄嗟に体に力を入れて踏ん張った。だからだろう、ぶつかった相手は弾かれるように後ろへと倒れていった。
相手が抱えていた本のうち、数冊が床へと落ちた。ぶつかったことに苛立ちを覚えて正面の人間をギロリと睨みつけた。
「…………あら？」
俺の顔を見上げていたのは、本を抱えて床に尻餅をついていた探し人だった。
「ど──ぁ……、…………なに派手に素っ転んでんだ」
“──どこに目ぇつけてんだ、あ゛あ！？”
そう怒鳴りつけようとした言葉は素っ気ない言葉へと変換されていた。
「いえ、結構な勢いでぶつかられましたわ。爆豪さん、図書館の中ではゆっくり歩くことを推奨します」
ぽかんとしていた顔は、ぶつかった相手が俺だと認識した途端にむっとした表情に変化した。不思議と癪に障ることはなく、なんだかむず痒い気持ちが心に差し込んだ。
そして俺は自分では考えられない行動を起こしていた。なんと女に手を伸ばしていた。それは本当に無意識で、気づいた時には女を助け起こしていた。
「ありがとうございます」
「……別に」
「でも、前を見ずにつっこんできたのは爆豪さんですわよ？」
「……悪かった」
こんな言葉が出るなんて、やっぱり俺は厄介な個性に掛かっているのかもしれない。
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
