１４★★「すごい顔してるぞ」 ページ41
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あの後……電話を終えたAと合流してから、俺はどうしただろうか。動揺のあまりどんな会話をしてたのか思い出せない。そもそも会話をしていたのか。いや、していない。ずっと上の空で、ただAの話に相槌を打っていた。
口を開けば電話のことを聞いてしまいそうだったから。
☆
ここ数日、イライラすることばかりだった。仮免試験に落ちて、その腹いせにデクに喧嘩を売って謹慎になって。インターンにも行けず、空虚な日々を過ごしているだけだった。
アイツに会ったら、少しは気分が晴れるだろうか……。
ヒーロー展に行って以来、会っていない女の顔を思い浮かべる。雄英が寮制になって外出が厳しくなった。それに仮免試験のための特訓で時間がとれなくなり、図書館に足を運んでいない。
──いや、それはただの後づけだ。違う。俺は逃げている。あの日、あの電話を聞いてしまってから、俺は言い訳がましい理由を付けてAに会うのを避けている。
なのに、今更会いたいなんて──……
「──……く豪。爆豪」
「あ゛！？」
「何ぼーっとしてんだ。ぶつかるぞ」
「〜〜〜〜っ、してねーわ！！っつかなんでついて来てんだよ！！」
「寮に帰るんだから道が一緒なのは当然だろ」
仮免試験に落ちた俺と半分野郎は、休日に実施される補講に出席していた。何かと面倒な課題に振り回されて、今は寮に帰るところだ。
「おい爆豪、あれ」
「あ？」
「Ｉ・エキスポの時にいたやつじゃないか？」
「！！」
半分野郎が指差した先には私服姿のAがいた。……いたが、もう一人。見知らぬ男が一緒だった。その男の腕に自分の腕を絡ませて、Aは楽しそうに微笑んでいる。
「──……、」
俺はその光景に息を呑んだ。と、同時に胸の内に負の感情が渦巻いた。デクに対するもの以上にそれは強く俺を蝕む。
「爆豪？どうした、すごい顔してるぞ」
「……先に帰ってろ。俺は用事ができた」
俺はそう言って半分野郎を先に帰した。
優しい眼差しでAを見下ろしていた男は、一つ二つ言葉を交わしてその場を離れていった。Aは男を見送った後、くるりと方向を変えてこちらに向かって歩いてきた。立ち止まっている俺との距離が少しずつ近づく。
ふと俺の視線を感じとったAは顔を上げて微笑んだ。
「爆豪さん！」
ああ、そんな目で俺を見るな。
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
