★★「まどろっこしいのはナシだ」 ページ25
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俺は鈴を持っていた手を降ろして、箱を抱える二人の男を睨みつける。不可解な行動をする俺を、おっさん共は怪しい目で見ていた。そりゃそうだろうな。これは１０代の耳にしか感知できない音を出す。
俺は上を向いて息を大きく吸い込む。そして吐き出しながら言った。
「あー……もう、まどろっこしいのはナシだ。────その箱寄越せや」
「い、いい加減にしろ、ガキがぁ！！！！」
「あ、オイ馬鹿……っ」
我慢の限界に達した前方の男が、箱から手を放して襲いかかってきた。上等だ。腰を落として爆破で応戦する体勢をと──「そこまでだ爆豪君」
「あ゛あ！？」
目の前に迫った男が、縄に捕らえられて遠ざかっていった。──否、俺が後ろに引き寄せられていた。全身の服が掴まれたかのように強い力に一瞬で。
気づくと俺は両手を後ろで拘束されて宙吊りなっていた。
「相手を怒らせてどうする。あの箱の中には百日紅氏のお嬢さんが入ってるのかもしれないのだろう？」
「……」
「犯人を捕まえるだけが、ヒーロー活動ではないのだよ」
ため息まじりにベストジーニストが説教じみたことを呟く。
「でもまぁ、君が彼らの気を引いてくれたおかげで、捕縛の準備が捗った」
「……」
俺は宙吊りのまま、Aが入れられている箱を見た。後方にいた男は複数のヒーローに取り押さえられながらも小さく抵抗している。
人質救出のため、別のヒーローが箱に近づいた。
「ベストジーニスト！箱にロックがかかっています！！」
「解除しろ」
「はは、無駄だっ。そのロックは特殊な技法で──」
「解除できました」
「なに……っ！？」
「ご苦労」
自分の施したロックによほど自信があったのか、数秒で解除されて男は放心した。生憎、救出にあたったのは『解除』のエキスパートだった。
「……オイ」
降ろせ、と目で訴えるとベストジーニストは俺の拘束をすんなり解いた。地面に足がついてすぐに駆け出し、箱を開けようとしているヒーローへと駆け寄った。
(A……っ)
縄で手足を縛られて布で口を塞がれている姿を思い浮かべる。狭く暗い中でひどく恐怖を感じているに違いない。箱が開いたと同時に俺は叫んだ
「オイ！！無事……か……。…………あ？」
「…………むにゃ」
俺の心配とはよそに、それはそれは穏やかに。眠り姫のごとくAは眠っていた。
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
