「恐くなくなるまで離れないで」 ページ37
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爆豪のマンションへ帰り、夕食をすませてテレビを見る。
どの局もつい先ほどのできごと──脳無の襲撃のニュースを速報として報じていた。
無神経にも搬送されていく気絶した脳無の映像が堂々と流れている。
「──……チッ」
爆豪は舌打ちをしてチャンネルを別の局に変えた。
全く関係ないただの料理番組に。
「勝己くん、どうしたの？ ニュース見ないの？」
「……別に」
突然チャンネルが変わったことにAは不思議そうにしていたが、爆豪はそっけなく答えた。
「ふふ、大丈夫だよ。ありがとう」
「……」
Aは爆豪の意図を察してお礼を言った。
湯気の立った湯呑みを両手で包みながら、中のお茶をゆっくりと飲み干した。
「今思うとすごく危険なことをしたと思うし、なんであんなことができたのか不思議だよ」
Aの場合、より現状を理解しできる限りの策を練ろうと頭をフル回転させているので、その場で恐怖を感じている暇はない。
しかしそれは後回しにされるだけで、恐怖を感じないわけではない。
フラッシュバック──とまではいかないが、夜中に１人で震えることもあるらしい。
そういう時は連絡しろと言っているのに、自分の問題だからとなかなか融通が利かない。
「今日だって私のために直帰するって連絡入れてくれたんでしょ？」
「てめーは大丈夫だって言い張って俺を頼らねぇだろ」
「……だって迷惑──」
「ンなこと思わねぇよ」
隣にいたAを横抱きにして、胡座をかいた足の隙間に座らせる。
体を囲うように腕を回して自分へと引き寄せる。
「勝己君」
「あ？」
「キス……して、いっぱい」
「ああ」
「恐くなくなるまで離れないで」
「ああ」
Aが望むままにたくさんキスをして、甘えるように縋りついてくる体を強く抱きしめて。
この様子じゃきっと夜はゆっくり眠れないだろう。
安心して眠れるように優しく頭を撫でながら、爆豪はをあやすようにしてAを寝かしつけた。
＊＊＊＊
翌日の昼前。
午後から講義があるAは余裕を持ってマンションを出る準備をした。
「いってきまーす」
「良いのかよ、送らねーで」
「朝早いわけじゃないから大丈夫！ 電車も空いてるだろうし」
昨日のことなんてなかったかのように振る舞う。
爆豪の気遣いが功を奏してか、Aは元気よく大学へと出かけていった。
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作者名：瑪瑙
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2018年8月20日 0時
