比翼連理には程遠い３【轟焦凍】 (ページ1)

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第十七話ページ1

＊ … * … ＊ … * …＊

Aにとって大変だった土日が終わり、月曜日がやってきた。
精神的な疲れは残っているが、それを理由に学業を疎かにするわけにもいかないので、いつも通りに登校して──いるはずが、

「あのさぁ……」

Aは半歩前を歩く人物に対して不満げに投げかけた。

「この手はなんなのかな、焦凍君」

「はぐれるかもしれねぇだろ。迷子になったら大変だからな」

「寮から校舎の道のりではぐれるわけないでしょ！！今日まで迷わずに登校できてたの知ってるでしょ！？私を馬鹿にしてる？殴っていい？」

いつも通り寝起きのテンションでぼーっと歩いていたAの手を、絡めとるように轟は自分の手と繋がせた。
遠回しに離せと言っているのに、まるで納得させる気のない理由が返ってきて呆れる他ない。

「まんざらでもねーんじゃねーか？」

「はあ？なに訳の分からないこと言ってるの」

「これくらい振り払おうと思えばできるだろ。そんなに力は入れてねぇし」

「……っ」

つまりはAが本格的に嫌がっていないと確信しているのだ。
無理やり離すのは悪いかなと思って穏便に済ませてやろうと思っていたのに……。
そこまで言うならと、Aの決心は固まった。

「分かりました！振り払えばいいんでしょ！」

──と、頭より高く上げた腕を力いっぱい振り下ろした勢いで、手を振り払った。
無事に手が外れ、スッキリした気持ちで歩き出したその瞬間、

「なんでまた繋ぐの！？」

「繋ぎなおさねぇとは言ってない」

「はあ！？」

「ちょっと手の力を緩めてくれ。恋人繋ぎができねぇだろ」

「〜〜〜〜っ！」

だまし討ちのような屁理屈を交えて繋ぎ直された上に、新たな要求が加わっていた。
今度は振り払おうと思っても掴む力が強くて難しい。
さっきのは“離してもらえた”と言ったほうが正しいだろう。

「いいじゃねえか。婚約者なんだし」

轟は上機嫌に繋いだ手を引き寄せお互いの距離を縮めた。

「……あなたの婚約者が離して欲しいと言っているのだから、離してもらえませんかね？」

「お前の婚約者が繋ぎたいって言ってっから繋いでてもいいだろ？」

「……」

ダメだ。
まともな会話が成り立たない。
たとえどうにか説き伏せたとしても力で敵わないのだから、結果的に轟の思い通りになるのだが。
幸いなのは、教室で予習しようと早めに寮を出たおかげで人が少なかったことだった。

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