比翼連理には程遠い２【轟焦凍】 (ページ39)

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＊ … * … ＊ … * …＊

「……」

確かに。
確かに車内で不覚にも眠ってしまった自分にも非がある。
油断していた。
というより現実逃避をしたと言った方が正しいのかもしれない。

学校からタクシーで来たというのだから、もちろんそのまま往復で学校に帰っているものと思うだろう。
しかし轟が言うには時間的にも手持ち的にも学校まで戻るのは難しかったそうで。

「結果、自分の家に帰ることにした」

「……」

それらの説明を聞いて反論できるほどAは図太くなかった。
パーティーの途中で抜け出したのでお金なんて持っていないし、そもそも寝てしまっていたのだから文句を言える立場ではない。

起こしてくれればいいのに「なんか起こす感じじゃなかった」とか意味のわからないことを轟は言う。

「だからってなにも同じ部屋に」

「別に問題ねぇだろ。婚約者なんだから」

「問題大ありよ！たとえ婚約者だとしてもその……順序というか……付き合ってもいないのにこんな──……」

ぐぅ～……きゅるる……。
自分が言いたいことをどう表現しようか言葉を選んでいる最中に、お腹からなんとも間抜けな音が響いた。
反射的にお腹を抑えてももう遅い。
顔だけでなく体中が一気に熱くなるのを感じた。

「起きちまったし、朝飯にするか」

「……」

立ち上がった轟は布団を畳み始めた。
自分と違って余裕のある態度が悲しいというか悔しいというか。
けれど空腹を感じているのは事実で、Aも同じように自分の布団を畳む。

部屋を出て廊下を歩く最中にあることに気づいた。
自分が着ているのはドレスではなく寝巻き。
婦人ものであることから轟が所有している衣服でないことは分かるが……。

「あの、焦凍君」

これは重要なことなのでぜひ真摯に答えていただきたい。

「私の着替えって……」

「俺がした」

「は！？」

「嘘だ。姉さんがしてくれた。俺がしても良かったけどな」

「～～～～っ！」

意地悪そうな笑みを浮かべて居間に入っていく轟の後ろ姿を睨みつけながら、心の中で地団駄を踏んだ。

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