比翼連理には程遠い２【轟焦凍】 (ページ38)

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第十六話ページ38

＊ … * … ＊ … * …＊

「……はにゃ？」

起きて早々こんな間抜けな声を出したのは人生で初めてだ。
なぜなら目を開けて真っ先に視界に入ったのが見知らぬ天井だったのだから。
Aは目を擦りもう一度天井を見る。
旅館に泊まった時、たしかこんな感じの天井だったなぁ……とぼんやり見つめていたが、今はそんな感想を言っている場合ではない。

(ここ、どこよ！？)

体を起こそうとしたがなぜか数センチ浮いたところで布団の上に戻された。

(あれ？)

体が重い？
……いや、お腹の上あたりに圧迫感があった。
これは布団の上に何かが乗っていて、それがAの起床を阻んでいるのだ。

(いったい何が……うで？)

筋肉質な腕が布団の上からAの体を包むようにのしかかっていた。
その腕の先を視線で辿っていくと──……

「はあ！？」

信じられないことに、Aのすぐ隣に轟の寝顔があった。
なんともあどけなく可愛らしい寝顔であるが、Aはその頬を力一杯引っ張ってやりたかった。

「ちょっと！起きなさいよ！この腕をどけて！！」

「……ん、うるせぇ」

「じゃないわよ！起きろーー！！」

＊ … * … ＊ … * …＊

「ちょっとそこに正座なさい」

「んー……」

布団の上に正座をして向かい合う。
無理やり起こされた轟はまだ完全に覚醒していないようで、目をしょぼしょぼさせていた。

「どういうことか説明していただいていいでしょうか？」

部屋の中央に布団が２つあり、それが隙間なくくっつけられていたことについて。
Aは怒りを抑えながらも丁寧な口調で説明を求めた。

「Aがいつまでたっても起きなかったから俺の部屋で寝かせた」

「そこよ！なんで躊躇もなく自分の部屋で寝かせてるのよ！！ ……ん？俺の部屋？」

そういえばここがどこなのかを聞くのを忘れていた。
別のことに気を取られていたせいである。
Aは胡乱げに部屋の中を見回した。

「えーっとここはＡ組の寮でいいのよね？」

間取りが違うような気がするが、男子寮と女子寮の違いだろうか。
やけに和風テイストなのは轟の趣味なのか。
そういえば、轟が引越し当日に大々的なリフォームをしたという話を八百万たちに聞いたような気がする。

ここまで本格的にするのかと無遠慮に見渡していると、

「違う。俺の家の俺の部屋」

と本人が宣った。

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