比翼連理には程遠い２【轟焦凍】 (ページ35)

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「す、すまない。不快な思いをさせてしまって！しかし当の本人が知らないのは騙しているみたいで気が引けて……っ！けれどそのような顔をさせてしまうのならやめておいた方が良かったのかもしれない！ほんとうに申し訳ない！」

「……ううん。教えてくれてありがとう。こっちこそごめんなさい」

相当深刻な顔をしていたようで、飯田が尋常でないほどに取り乱して謝罪した。
彼が悪いわけではないのにあまりにも真剣に謝るので、Aも申し訳なく思って頭を下げる。

「無理しなくていい。急にこんなことを言われて辛いのは当然だ」

「大丈夫、だから」

「……」

けれどやはり心は正直で、不安な気持ちは隠しきれていなかった。
目の前にいる飯田の表情がそれを物語っている。
ポーカーフェイスもできないほどに自分は傷ついているらしい。

視界がぼやけていく。
大丈夫だって言ってるのに。
そう自分に言い聞かせているのに。

(……っ、)

目の奥がぎゅっと締めつけられるような感覚と同時に涙が溢れる。
自分の意思とは関係なく次から次へと止めどなく。

「君が望むのならここから連れ出すことができる」

「え？」

飯田のつぶやきを聞いてAは顔を上げれば、こちらをまっすぐに見据える眼差しと目が合う。

「飯田くんが？」

「いや、俺ではなく──……」

飯田がAの言葉に答えようと言いかけた瞬間、風が吹いた。

それは涙が伝う頬を撫でるように優しく。
Aの視線を導くように強く。

吸い寄せられるように振り向けば、はためいたカーテンの向こうに人影が見えた。

「誰……？」

反射的に問いかけたが、そのシルエットを見ればわかってしまう。
化粧が崩れるのも気にせず目を擦って視界から涙を消し去れば、ほら──……。

「焦凍、君……」

「あんまり擦るな。目が痛くなるぞ」

「……う、ん」

柔らかい声とともに手が伸びてきて、自然な動作で目の端を溢れる涙をすくいとった。
親指の腹で撫でるように。
それがくすぐったくて、Aは思わず目を閉じた。

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