比翼連理には程遠い２【轟焦凍】 (ページ21)

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第十三話ページ21

＊ … * … ＊ … * …＊

「ありがとうございます！！俺、頑張るっス！！」

夜嵐は輝かしい瞳で交換したアドレスを見つめていた。
そして大事そうにポケットにしまった後、再びAの手を握り無遠慮に顔を近づけた。

「あの、今度お茶でもいかがっすか？色々話を聞きたいっス！！」

「えー……っと。そ、その前にその……」

ち、近いんですけど……！
女子校育ちであるAにはほぼ皆無と言っていいほど男性と接する機会がなかった。
そのため今の状況は非常に精神的に耐え難かった。
かと言って助けてもらった恩人に離れろとは言えない。

(いや、あの本当に勘弁して欲しいんですけど！！)

グイグイと押し寄せて来る圧に耐えられず、適切な距離を保とうとAの体は後ろ向きに傾いていく。

「どうっすか！？」

「え、あ……う──」

後方に傾いた体勢を維持するのもそろそろ限界に近い。
これは返事をしないと離してもらえそうにないと頷きかけたその時、

「──オイ、気安く触れてんじゃねぇぞ」

「え！」

「ふが、」

地の底から這い出るような低い声が背後──いや、頭上から聞こえた。
え、っと顔を上げると後頭部が硬い何かに当たる。
そんな距離にいたのは、パーソナルスペースなど関係なしに迫っていた夜嵐の顔を片手で押し返す轟だった。

「……は！そうっすね！！軽々しく女性の手を握るなんて……申し訳ないっス！！」

轟の忠告をを受けて手を離した夜嵐は、慌てて謝罪をした。
手の圧迫がなくなって安心した次の瞬間、ゴンッ！！と鈍い音が響いた。
それは夜嵐が謝罪として下げた頭が地面に激突する音だった。

「初対面の女性に俺はっ、なんて失礼をッ！」

「いや、それよりも血が出てるけど大丈──」

顔を上げた夜嵐の額に滲む血を見て思わず近づこうとすると、後ろから伸びてきた手がAの行動を制止した。

「次はないと思え」

「え？」

Aの肩に手を置くとともに背後から威圧たっぷりに放たれた言葉に思わず振り返る。

(そ、そこまで言う必要がある……？)

しかも当事者じゃない轟が。
地面に頭を打ちつけて僅かながらも血を流している相手に。
けれどなんだが不機嫌そうなその表情を見て、その言葉は飲み込まれた。

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