初々しい ページ48
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工房での作業がない日、Aは保健室で祖母の手伝いをしていた。
本日は治療を必要とする生徒はほとんどいなかった。
放課後になると祖母はAに任せて帰宅する。
何かあったらすぐに呼ぶようにと言われているが、今のところそういった事態には遭遇していない。
「絆創膏、消毒液……は在庫あり……と。湿布が残り少ないかな」
特にすることもないので、棚や引き出しの中の備品をチェックしていた。
「あとはガーゼ────……っ！？」
そろそろ補充が必要なものをメモしていると、両側から伸びてきた腕にAの体が閉じ込められた。
「A」
「轟君……っ」
耳元で囁く声はつい最近恋人になった人物、轟焦凍のものだった。
「キスしてくれ」
「うぇ……ええ！？ な、なな、何を言ってるんですか！？」
「怪我した」
「……怪我？」
後ろから抱きしめる轟は、Aの顔の前に左の人差し指を出した。
線になって切れている中心部分から粒のような血が浮き出ている。
「カッターで切った」
「……わざとじゃないですよね？」
「わざとじゃねぇ。紐を切る時にこう……ザシュッと指もろとも……」
「い、言わなくて良いです！！」
轟はAの個性を強化するために協力してくれている。
まだまだ克服にはいたってないが、機会をもらえるのはそれはありがたい。
ただ問題なのは……
「唇にしてくれ」
「ま、またですか！？ て、手首で良いじゃないですか……」
「やだ」
だだをこねた子供のように短く言う。
(またそんな可愛い言い方を……！！)
轟とキスは……まぁ、そういう雰囲気になったらしている。
……が、治癒の時は状況が違う。
個性を発動させてからキスをしないといけないので、Aが主導権を握ることになる。
つまり、“Aが轟にキスをする”のだ。
(恥ずかしいに決まってるでしょ！！)
場所は関係ないと判明したので手首でいいだろうと毎回説得しているが、轟は頑として首を縦に振らない。
結果、Aが折れて唇にキスするはめになる。
「もう……分かりました。扉と窓とカーテンを閉めて下さいっ！」
「分かった」
指示された通りに轟は動く。
それから椅子に座って、正面に立つAを見上げてふわりと嬉しそうに笑った。
(ああ……もう、ずるいよなぁ……)
恥ずかしさを堪えながら、Aはその唇に初々しいキスを落とした。
【特別編】──了
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moeka(プロフ) - こちらの続編と轟兄妹との絡みを希望します。ぜひ検討して下さると嬉しいです。楽しみに待ってます。 (2021年6月28日 22時) (
レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
silver - どっちも好きですが、こっちが好き！ 続編を希望します！ (2020年11月7日 15時) (レス) id: 0515bcf5a2 (このIDを非表示/違反報告)
麗奈(プロフ) - 私はどちらかと言えば癒月ちゃんの話の方が好きです。こちらの続編を希望します！ (2020年3月23日 5時) (レス) id: acabdf4bd5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 爆豪の方も、こちらの話も、好きです！更新頑張ってください！ (2018年12月5日 21時) (レス) id: 26236bbcfc (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - 私癒月ちゃんの方が好きかもです。 是非続編希望します。この作品が、シリーズの中で一番好きです！ (2018年11月11日 0時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年7月21日 1時
