克服 ページ20
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轟はAの左手に顔を近付けて、まじまじと眺めていた。
約束を守って治癒した手のひらは、火傷の跡も残さず綺麗に治っている。
(……ていうか、この体勢)
昨日のことを思い出してさらに顔の熱さが増す。
あのキスは「おまじない」のようなものらしい。
怪我した時に熾雪とよくやるそうで、自然とやってしまったと後から彼は弁解した。
心臓に悪いからそれは兄妹間だけでお願いしたい。
あと、まわりに人がいなくて良かったと心底安心した。
(誰かに見られたら大変だ……)
雄英の王子(そう呼んでいる人もいるらしい)である轟焦凍から手にキスされるだなんて、許されるのは熾雪くらいだ。
(あれ？ もしかして熾雪さんに知られる方がまずい……？)
熾雪が兄のことが大好きなのはここ数日で充分に理解できた。
工房に通っている間、彼女が話すのはほぼ轟の話題だったのを思い出した。
(……)
いずれにせよ、誰の耳にも入らぬよう徹底しよう。
＊＊＊＊
轟の協力もあって、Aのトラウマ(？)は克服できた。
最初こそは震えていたが、轟が「無理にやろうとしなくていい」と気分転換に食堂に連れて行ってくれたり、会話で緊張をほぐしてくれた。
そのお陰もあって手の震えは徐々になくなっていった。
予定より時間はかかったがリストバンドは無事に完成し、仮免試験に間に合った。
そして夏休みが終わり、通常授業が始まった。
といっても、サポート科は午後からは実習なので各自のやりたいように過ごせる。
(今日はパワーローダー先生のところで解体作業かな……。パン買って行こう)
昼食は購買でパンを買うことが多い。
ぱっと食べることができるので便利なのだ。
疲れてお腹がすいた時のために余分に購入しておく。
ついでに食事も忘れて発明に明け暮れる発目の分も。
工房で食べてそのまま解体作業にと思い、パワーローダーの工房に向かった。
すると、最近よく目にする赤と白のコントラストが目に入った。
扉の前で壁を背にして俯いていた。
「轟君？」
「……A」
顔を上げた轟が浮かない表情をしていた。
「どうしたんですか？」
「A、悪ぃ。謝らねぇといけないことがある」
「え、なっ、なんですか？」
唐突に轟が畏まって言い出したので、Aは身構えた。
「仮免試験に落ちた」
「え！？」
轟かの口から出たのはあり得ない言葉だった。
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moeka(プロフ) - こちらの続編と轟兄妹との絡みを希望します。ぜひ検討して下さると嬉しいです。楽しみに待ってます。 (2021年6月28日 22時) (
レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
silver - どっちも好きですが、こっちが好き！ 続編を希望します！ (2020年11月7日 15時) (レス) id: 0515bcf5a2 (このIDを非表示/違反報告)
麗奈(プロフ) - 私はどちらかと言えば癒月ちゃんの話の方が好きです。こちらの続編を希望します！ (2020年3月23日 5時) (レス) id: acabdf4bd5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 爆豪の方も、こちらの話も、好きです！更新頑張ってください！ (2018年12月5日 21時) (レス) id: 26236bbcfc (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - 私癒月ちゃんの方が好きかもです。 是非続編希望します。この作品が、シリーズの中で一番好きです！ (2018年11月11日 0時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年7月21日 1時
