会えない ページ14
.
轟に怪我を負わせてしまった翌日、Aは解体作業を繰り返していた。
夏休みということもあり、普段より量が多い。
作業に集中できるのでありがたいといえばありがたい。
(やっぱり私は作るより壊す方が向いているのかもしれない……)
Aが辞退したリストバンド制作は、その日のうちに先輩に引き継いだ。
轟のサポートアイテムだと知ったその先輩は、ものすごく張り切って制作にあたっていた。
徹夜する勢いだったらしく、今日の朝には完成して本人のもとへ届けられたらしい。
(最初からそうしておけば良かった……)
自分が作ったサポートアイテムが人を傷つけてしまった。
ヒーローを支援するためのものが、逆に足を引っ張ってしまった。
これからも、そんなことがあるかもしれない──……
昨日の失敗がAの心を苦しめる。
「──へ！？ な、なんで……？」
(……？)
発目と一緒にいた熾雪が困った声を出した。
会話を聞くに、Ａ組のいる体育館へ様子を見にいって欲しいということらしい。
「明ちゃんが行ってきたらいいじゃない……なんで私が？」
Ａ組の男の子を避けていると聞いていたので気まずいのだろう。
発目自身に行くように勧めていたが、「私は忙しいのです」と相手にされていなかった。
眉を下げながらこちらを窺う熾雪の視線に、Aはびくっと肩を揺らす。
「Aちゃん、一緒に行かない？」
「えっと……ごめんなさい。私は解体作業があるので」
「……そう」
熾雪は落胆した声と表情を浮かべた。
「じゃあ……いってくるね」
「いってらっしゃい……」
Aが普段使っているメモ帳を貸して熾雪を見送った。
(すみません！ すみませんっ！)
解体作業を理由に断ってしまったことに罪悪感を覚えて、心の中で謝罪を繰り返す。
本当は自分勝手な理由だ。
Ａ組の様子を見にいくということは、つまり轟と顔を合わせるということ。
昨日あんなことがあったのに、どの面を下げて見学に行けば良いのだ。
気まずいにも程がある。
腹を割って話し合えば解決するだなんて──……
軽々しく口にした昨日の自分を全力で殴りにいきたい。
自分がその立場になって分かった。
……無理だ。
(もう轟君には会わない。──会えない……)
Aはボタンが入ったお守りを、胸の前でギュッと抱きしめた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 480人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
moeka(プロフ) - こちらの続編と轟兄妹との絡みを希望します。ぜひ検討して下さると嬉しいです。楽しみに待ってます。 (2021年6月28日 22時) (
レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
silver - どっちも好きですが、こっちが好き！ 続編を希望します！ (2020年11月7日 15時) (レス) id: 0515bcf5a2 (このIDを非表示/違反報告)
麗奈(プロフ) - 私はどちらかと言えば癒月ちゃんの話の方が好きです。こちらの続編を希望します！ (2020年3月23日 5時) (レス) id: acabdf4bd5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 爆豪の方も、こちらの話も、好きです！更新頑張ってください！ (2018年12月5日 21時) (レス) id: 26236bbcfc (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - 私癒月ちゃんの方が好きかもです。 是非続編希望します。この作品が、シリーズの中で一番好きです！ (2018年11月11日 0時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年7月21日 1時
