彼の名を ページ24
.
それが夢であるならどんなに良かっただろうか。
あの光景が単なる悪夢で
いつものように無愛想な目つきで見下ろして
不機嫌な声で「クソ女」と私を呼んで
乱暴だけど、どこか優しい手つきで頭を撫でる。
そんな君がいつもそこにいる……────そんなふうに、思っていたのに。
「今……なんて？」
病院のベッドで上半身だけ起こしたAを、暗い表情のＡ組の生徒が囲っていた。
見舞いにきてくれた彼らに現状を聞いたがその言葉が信じられず、Aはもう一度聞き返した。
「…………爆豪が敵に捕まった」
少しの沈黙の後、言いにくそうに上鳴が同じ言葉を繰り返した。
爆豪が敵に捕まった？
「じゃあ……あれは夢じゃなくて？え、でも常闇君はちゃんとここに……」
「そうか、お前は見ていたんだな」
常闇がAが言う“あれ”が何のことかを察して口を開いた。
敵の個性で捉えられた後衛の２人。
緑谷たちが奪還を目指したが、爆豪だけが敵の手に渡ってしまった。
(そんな……っ)
いても立ってもいられなくて、勢いよくベッドを飛び出す。
──が、足に力が入らず床に崩れ落ちてしまった。
「Aちゃん……っ、何してるん！？ 無理やって」
「だって……」
助け起こそうとする麗日にしがみつきながら立ち上がろうと試みるも、力が入らない。
手を貸して欲しいと、心配する面々を見上げて焦凍の姿がないことに気付く。
「焦凍は……？ もしかして、どこか怪我を……」
「違う違う、元気元気！なんか知らねえけど連絡が取れなくてさ……。朝はちゃんと様子を見に来てたんだぜ？」
「いつも面会時間ギリギリまで病室にいて、Aちゃんが目を覚ますのを待ってたんやけど……」
取り乱すAを瀬呂と麗日が宥める。
他のメンバーも言葉を選んで順々に落ち着かせようとした。
「爆豪ちゃんのことなら大丈夫。プロに任せると良いわ」
「そうだよ。おとなしく寝てなよ、ね？」
「……っ」
蛙吹に続いた芦戸の言葉にAは酷く動揺した。
──おとなしく寝とけ。
彼の言葉、彼の声、頭を撫でる手の感触が鮮明に蘇る。
それがもし感じられなくなるというのなら。
(やだ……。やだよ爆豪君……、爆豪君……っ)
涙が溢れて視界が滲み、ぽた……ぽた……と雫が床を濡らした。
爆豪君……──
声もなく、ただ唇だけを動かして彼の名を呼んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1515人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠依(プロフ) - やっと夢主ちゃんと爆豪くんがくっつきましたね...！とても胸がキュンキュンして1日中、爆豪くんのことしか考えられなくなりました！！最高です！！！これからも更新、頑張って下さい！応援してます！ (2018年6月1日 17時) (
レス) id: 518b20c440 (このIDを非表示/違反報告)
ふーこ(プロフ) - 萌えすぎてハゲそう。これからも頑張って下さい！！！ (2018年6月1日 15時) (レス) id: bce62ace19 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ここに天才はいたんですね、、、 (2018年5月31日 21時) (レス) id: cfdb26c000 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - んあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"やばいです絵も文才も！これからも頑張ってください！ (2018年5月31日 19時) (レス) id: ce4a985f40 (このIDを非表示/違反報告)
うらら@坂田家.ぴく民.ら民.ゆっ家族.などいっぱい← - え！？！？ちょちょちょちょちょちょ.......絵上手すぎん！？！？！？！？！？！？ (2018年5月29日 23時) (レス) id: 6f50c84bd5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2018年5月13日 13時
