ユーフォリック・シンフォニー【爆豪勝己】 (ページ24)

今日:18 hit、昨日:5 hit、合計:97,793 hit

０７◇「だから今まで気づかなかったのかー」ページ24

.

手の甲に落とされた唇は、瞬く間にAの腕の傷を癒した。

「はい。これで完治しました。調子はどうですか？」
「うん、もう痛みはないよ。ごめんね。私のために急いで戻ってきてくれて」

少し腕が切れただけなので出張が終わるまで待とうと思っていたのに、連絡を受けた癒月はわざわざ時間を作って治療にきてくれたのだった。

「何言ってるんですか。Aさんも私の大事な家族ですよ」
「ありがとう」

包帯を解いてガーゼを取れば、綺麗に完治した皮膚が現れた。
これで普通にお風呂に入れる。
用のなくなった包帯を回収した癒月は「あ、そうです」と思い出して、持ってきたファイルを広げた。

「勝凍君の個性の再検査、結果が出たから報告しますね」
「お願い」

Aは勝凍の個性の再検査を依頼していた。
今回の事件でどうしても気になったことがあったからだ。
癒月はページに目を通して結果の概要をAに伝えた。

「勝凍君の手からもお父さんと同じ汗が出ているようでした」
「やっぱり」

予想は当たっていた。
あの爆発はどう見ても爆豪のものだが、本人は個性を使っていないとのこと。
ならば残る可能性は……

「つまり勝凍は勝己君の『爆破』も使えるってこと？」
「いえ、爆破するまではできなみたいです。発火の個性は引き継がれていなかったので」
「だから今まで気づかなかったのかー」
「はい」

氷の個性が出たからAの個性を受け継いだと喜んでいたが、ちゃっかり父親の個性も遺伝していた。
焦凍やAの例もある上、いまの世代は複数の個性を持っていても不思議ではない。

「今回は氷に混じっていた汗が火月の炎がきっかけで爆破したと考えて妥当でしょう」
「うん。私も一応その瞬間は目撃したから間違いないと思う」
「あんまり同時に個性は出さないように言っておかないと」
「だねぇ……」

一歩間違えれば大惨事だ。
きちんと制御できれば問題ないが。

「やっぱりそろそろお父さんか叔父さんに扱い方をレッスンしてもらうべきかな？」
「そうですね〜」
「２人とも孫にデレデレだけどね」
「くすくす」

ひとまず勝凍と個性届けの更新手続きと、このことを爆豪に報告しなくては。
きっと驚くだろうな。

.