ユーフォリック・シンフォニー【爆豪勝己】 (ページ20)

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　　　「僕がママを守るんだ！」ページ20

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男は素振りのようにナイフを振り回し、一歩、また一歩と勿体振るようにAに近づいてきた。

──私はここで殺されてしまうのだろうか。

己の命が危ぶまれている危機的状況なのに、Aは冷静にそんなことを考えていた。
思考も麻痺させられているのかもしれない。
せめて、せめて子供たちは逃がしたい。
誰か、誰でもいい。

──子供たちを助けて！

「いてッ！！」

男が痛みを訴えて頭を押さえた。
その後も背後から攻撃を受けているらしく「あ！？なんだ！？」と腕で顔をガードしながら後ろを振り向いた。

Aも男の背後で何が起こっているのか確認するため視界を広げれば、目に涙をいっぱいためて個性で作り出した雪玉サイズの氷を投げる勝凍がいた。
手の中で氷を作り出しては投げ、作り出しては投げ。
男の周囲には届かなかった氷玉がいくつも転がっていた。

「僕がママを守るんだ！」
「悪い奴なんかお父さんみたいにやっつけるの！」

(何やってるの──！？)

動けるなら逃げなさい！
２人に向かって叫びたいのに喉に力が入らず声が出ない。
目で訴えても２人は男を攻撃するのに夢中でAを見ていなかった。

「チッ、うるせぇガキどもだな」
「……ッ、」

自身の体を支えるのに精一杯のAは、男の攻撃対象が子供たちに移ったことに恐怖を覚えた。

(やめて！お願い！その子たちだけは──……っ！)

「先におめぇらを始末してやる！！」
「ひィ……ッ」

逆上した男が殺意を持って叫んだ。
自分を睨みつける男に怯えた勝凍は真っ青な顔で固まってしまった。

「ママぁっ」
「やあぁ！」

勝凍と火月が泣き叫んでいる。
せめて個性が発動できたら……あの男を足止めできる力があったなら！
子供たちに向かっていく男の姿がスローモーションで瞳に映った。

「こないでーー！！」

ナイフを振りかざして迫り来る男に火月が叫びながら炎を放った。
小さくてまるで鬼火のような炎。
けれど、男が蹴飛ばした氷が火月の炎と交わった瞬間──……

BOOOOM！！！！！

「ぐわっ！！！」

目の前で爆破が起こり、男が悲鳴をあげた。

激しい炎に飲み込まれそうになったAはその直前に助け出された。
背中と膝裏に回された腕はよく知るもので、それが誰かなんて考える前に理解できた。

「──、なんとか間に合ったか」
「勝己……くん」

その姿を映した瞳からはぼろぼろと涙がこぼれた。

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