「いってらっしゃーい」 ページ11
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可愛い手で両目をくりくりとこすり、爆豪に焦点が合った瞳は眠気まなこからぱっちりまなこへと変貌を遂げた。
「おじちゃま！」
「──チッ、」
「今日はおじちゃまも一緒？ 火月と遊んでくれるの！？」
「違ぇわ。これから仕事だ」
「むぅ」
大好きな爆豪がいてはしゃぎ始めた火月だったが、仕事だと知ってふてくされた顔をした。
そんな火月を焦凍から受け取ったAは、抱っこしたまま出勤前の２人に笑顔を向けた。
「ほら、火月。おじちゃまとお父さんにいってらっしゃいしようね」
「いってらっしゃーい」
元気よく手を振って見送れば、焦凍は微笑んで手を振り、爆豪は目で“いってくる”と合図して玄関を出ていった。
「火月、もうちょっと寝る？」
「ううん。火月もう眠くない」
「そう……」
「焦凍おじさん来てたの！？」
「勝凍だ！」
「こっちも起きてきたか……」
まだ寝ていて欲しいのにもう１人のチビも目を覚ましてしまい、朝の予定が崩れる予感がしてAはうなだれた。
＊＊＊
娘に元気よく見送られてマンションから出た轟は、隣でむすっとしている爆豪を見た。
「爆豪」
「あ？」
「聞いたか」
「……。犯人が特定できねぇ以上警戒するしかねぇだろ」
「そうだな……」
何を、と言わずとも２人の間では認識できている。
現役のプロヒーロー間で話題に上がっているので、曖昧な物言いからでも会話は成立していた。
「それにしても大胆だな。ヒーロー協会のデータベースに忍び込むなんて」
「バカなんだろ。甘いセキュリティーシステムを組んでたヒーロー協会側もな」
「ヒーロー協会のセキュリティーがそんなに甘くないはずないだろ」
「突破されたら意味ねぇわ」
今の轟と爆豪の議論はすでに他でなされている。
今回の事件でプライドを傷つけられたヒーロー協会のお偉方は、最大限の人脈を生かしセキュリティーの強化と犯人探しに力を入れた。
犯人の特定も時間の問題だと言われている。
「それにしても……」
と、轟は呟いて続けた。
「犯人はプロヒーローの実績表なんか盗んでどうするつもりだ……？」
「俺が知るか！！」
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０３◇「今日のお昼は何が食べたい？」→←０２◇「嫌じゃないくせに」
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作者名：瑪瑙
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2020年7月9日 23時
