ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ44)

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　　　「静かにしたまえ」ページ44

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「Aっ！！」

焦りを宿した声とともにスライド式のドアが勢いよく開かれた。

場所は雄英大学の医務室。
微かに漂う薬品の匂いが鼻についた。

「静かにしたまえ。君はいつも騒がしい」

Aが眠るベッドの横に腰掛けていた男が振り向いた。
爆豪に連絡を寄越したベストジーニストだ。

２人の関係を知っている数少ない人物。
彼は人差し指を立てて爆豪の素行を含めて注意した。

「……ンでてめーがこの大学にいンだよ」
「月に一度、特別講師として講義をしているのだよ」

有名プロヒーローを招いての講義。
それがこの大学の売りだった。

当然ながらAもその講義を受講している。
様々なプロヒーローの話が聞けると毎回楽しみにしていた。

「熱があるみたいでね、講義の途中から机に伏せるだなんて彼女らしくないと思って、心配して声を掛けたのだよ」
「……」

爆豪はベストジーニストの隣からベッドを覗き込んだ。

Aは熱に冒されて苦しそうに息をしていた。

(昨日の……か？)

脳無の動きを止めるために氷を生成していた。
広いホールを覆うくらい巨大な大量の氷をだ。
それが原因だと、瞬時に理解した。

朝は元気だったので大丈夫だと思っていたが見事に騙された。

休めば良いのに、どうしても講義を受けたかったのだろう。
呆れたため息をついてAの頬をそっと撫でた。

「ん……」

目蓋が揺れて、ゆっくりと目が開かれる。

「かつき、くん？ ……あれ？違う？」
「俺だボケ」

サングラスと帽子で容姿を隠しただけで爆豪と断言できないほどに、Aの頭は熱にやられていた。

「調子悪ぃなら休めや、アホ」
「だって……ベストジーニストさんの講義、受けたかったんだもん」

予想通りの答えだった。
しかし内容はほとんど覚えていないという。
もう一度「ばぁか」と罵ってやった。

「帰るぞ」
「ん」

ベッドから起き上がるのを手伝う。
ふらふらのAを支えながら医務室から出ようとしたところ……、

「待ちたまえ、爆豪君」

ベストジーニストに呼び止められた。

「あ？」
「君、それでよくバレずにここまで来れたな」
「頭と顔、隠しときゃいーだろ。こんなん」
「最近、人気が上がってきたことを自覚したまえ」

その程度の変装ではいずれバレる──と、ベストジーニストは櫛や整髪剤を持って近づく。

数分後、懐かしい８：２爆豪が仕上がった。

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