ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ43)

今日:14 hit、昨日:16 hit、合計:244,713 hit

１０◆「何が言いてーんだよ」ページ43

.

ヒーローダイナマイトが次々と脳無を撃破している──というニュースがあちこちで流れていた。

夏から続いている脳無の襲撃は、大勢の市民の混乱を招いていた。
各地で暴れ回り、パトロールや出張で近くにいた爆豪が何度か向かわされていた。

《いやぁ、本当に助かりました》
《個性でドーンって！すごいんだっ》
《ヒーローらしくないヒーロー。それもまた良いなって……よく見ると顔も良いし》

数ヶ月前まではショートやデクの人気が目立っていたが、今や大人から子供まで世間は“ダイナマイトフィーバー”で沸いていた。

強く派手な個性を放ちながら、品の良くない言葉を浴びせて敵を倒す姿はヒーローとは言いがたいが、そこが良いというファンも出てきた。

しかし、それとは裏腹に“怪しい”という声もある。

《どうしてダイナマイトがいる場所、もしくは近くで脳無が現れるのでしょうか》
《そうですねぇ。偶然にしてはどうも……》

昼のニュースでコメンテーターたちが意見を交わす。
確かに偶然とは言いがたいほど、脳無の事件に爆豪は関わっていた。

《もうすぐランキングが発表されるので、それに向けて何か企んでいるのでは？》

──という心ないコメントまで出るほどに。

《今回も駆けつけるのも早かったみたいですしね》
《それは犯行予告があったからで────》

見かねたゲストがフォローを入れたところでテレビの電源が切れた。

「……──けッ」

爆豪は悪態をつきながら、用のなくなったリモコンを乱暴にテーブルに置く。

(好き勝手言いやがって……)

こっちは仕事でやっているというのに。
要請が多いのはヒーロー活動支援協会にまず情報が届くから。
機動力が高い爆豪に現場に向かえと連絡が入るのだ。

(あー……イライラする、ん？)

握りしめていたスマホが震えた。
ディスプレイにはいつの間にか登録されていた『ベストジーニスト』の文字。

「ンだよ、」

無視しようかと思ったが、気まぐれに通話ボタンを押して耳にあてた。

『やあ、久しぶりだね。君、今日は非番か？』
「……関係ねぇだろ」
『エンデヴァーとショートに連絡がつかなくてね。実家の方も留守のようだったから君に連絡をいれたのだよ』
「……あ？何が言いてーんだよ」

一方的に話し続けるベストジーニストの遠回しな言い方に苛立ちを覚えて、単刀直入に話すよう求めた。

『では……──』

『君の恋人が倒れた』

.