ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ37)

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　　　「きらいに、ならないで……」ページ37

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この季節にしてはまだ早い寒さで、爆豪は目を覚ました。
いつも以上に狭く感じる寝床にまず驚く。

(あー……そういや、昨日はリビングで寝たわ)

なんだかAと一緒に寝るのは気が引けて、ソファーで一夜を過ごした。
体勢が悪かったのか、体を動かすとパキパキと関節が鳴った。

それとはまた違う音が耳に入ってくる。
日常的には聞きなれない音。
しかし、たまに耳にする氷が生成されるような……──

「……あ？」

ピキ……ッ、ピキ……ッと音をたてて氷が壁を這っていた。
白い霧が寝室から漏れていることに気づいて、爆豪は飛び起きた。
慌てて寝室へ移動する。

「Aッ」

動きの鈍い扉をこじ開けると、真冬のように冷たい空気が剥き出しの肌を襲った。
寝室は一面に氷が張り巡らされていた。
ベッドの上には気怠そうに体を起き上がらせたA。

「……A？」
「……」

俯き加減に佇む姿に優しく呼びかけると、ゆっくりと顔を上げた。
爆豪を捉えた途端、Aの瞳からじわりと涙が溢れ出した。

「はなし……、きいてって、いったのに……、ぐず……っ」

しゃくりあげながら震える声で訴える。
シャツの袖で止まらない涙を何度も擦って。

「起きたら……勝己君、いないし」
「わ、悪ぃ……」

くしゃくしゃの泣き顔に謝りながら、慎重に足を進める。
経験から、Aの気持ちによっては近づかない方が良いと理解しているので、本当に慎重に。

ベッドの横に到達し恐る恐る両手を伸ばすと、Aの方から勢いよく抱きついてきた。
震える体を強く抱きしめて、優しく頭を撫でてやる。

「私のこと、捨てないで……っ」
「捨てるわけねぇだろ」

目が覚めて隣に爆豪がいなかったことが、よほど不安だったんだろう。
しがみつく力はいつも以上に強かった。

「昨日の、友達……」
「ああ、分かってる。俺の勘違いだった……」

冷静になってから気づいた。
パンフレットに載っていたショート役の出身校は百合咲女子学院。
Aが通っていた“女子中学”と同じだったことを。

それをAは何度も説明しようとしていた。
なのに、酒と怒りで判断がつかなくなっていた。
勢いで無理矢理な形で抱いてしまったことを深く反省した。

「きらいに、ならないで……」
「ならねぇよ」

目を赤く腫らしたAが見上げる。
爆豪はまずその目尻にキスを落として、優しく何度も唇を重ねた。

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