ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ35)

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　　　「マジ……、か……」ページ35

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爆豪は意識を失うように眠ったAを見下ろしていた。
激しく動いたことで流れ出た汗が、ゆっくりと白く艶かしい首筋をつたっている。
それを舌で舐めとった。

(しょっぺぇ……)

風邪をひかないように自分のシャツを羽織らせ、布団を首までかけた。

＊

「……あーーーー……」

ベランダに出て冷たい風にあたっていると、だんだん酔いが覚めてきた。

Aの口から他の男のことなんて聞きたくなかった。
だから何か言おうとするだびに、キスをしたり弱いところを攻めて言葉を塞ぐ。

自分から訊いておいて……──だ。

喉が渇いたのでキッチンに向かい、コップに水を注いだ。
それを一気に飲み干す。

(……ん？)

テーブルに放置されていたAの鞄、そこからはみ出している冊子が目に入った。
何かのパンフレットのようだった。

鞄から引き抜いて表紙を眺める。
そこには『人気の若手ヒーローの活躍を描いたミュージカル！』と銘打たれていた。

表紙を飾るのは役者が演じるデク、ダイナマイト、ショート。
その他にウラビティやクリエティ等、知っている面々が揃っていた。

何か違和感があると思ったら、衣装が舞台用に派手にアレンジされている。

(……そういや、)

数ヶ月前、若いヒーローを題材としたミュージカルをするから、許可が欲しいという旨の申請が来ていた。
馬鹿らしいと拒否しようとしたところ、Aが「良いじゃない！」と言って書類にサインするように促した。

興味がなかったので、今の今まで忘れていた。

(──チ……ッ)

中を見て不快感に眉を歪めた。
見るからにひ弱そうな男が、無理に“ダイナマイト”を演じようとしている。
これをきっかけに名前を売ろうとしているのがまるわかりだ。

(……あ？)

それからとある項目に目が留まる。

ショート役：宮美麗歌(みやびれいか)

轟のヒーロー名であるショートの文字の横に記されていたのは、女の名前だった。
中世的な顔立ちをしているが、経歴を見れば女子校出身なので男装して演じるのだろう。

何か引っ掛かる……と、思っていると鞄の中のAのスマホが震えた。
通知画面には冊子にあるものと同じ『宮美麗歌』の名があり、その次にメッセージの内容が表示されていた。

『今日はありがとう！！』
『私のショート姿どうだった？また役作りに付き合ってね～！』

「マジ……、か……」

その文章を見て爆豪は絶句した。

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