ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ32)

今日:14 hit、昨日:26 hit、合計:244,697 hit

　　　「答えろ」ページ32

.

その日の晩、友人との約束を終えたAはマンションに戻った。
ほどよくお酒も入っていて気分がいい。

もう少しほろ酔い気分を楽しみたいと思い、冷蔵庫の中にあった発泡酒を手にとって口を開けた。

ピンポーン……──

さあ飲もうかという時に来客を知らせるインターフォンが鳴った。
焦凍は鍵を持っているので呼び出す必要はない。
では誰か。

確認のためにモニターを見ると……、

(勝己君？)

仕事帰りであろう爆豪の姿があった。
こっちに立ち寄るなんて珍しい。
残業があって電車がなくなった時にここを利用することはあるが、終電はまだ残っている。

滅多な理由がない限り、焦凍が出入りするこのマンションには近寄らない彼が、こんな時間にどうしたのだろうか。

「はいはーい。どうぞー」

エントランスのロックを解除して、爆豪を招き入れる。
勝手に入って来れるように玄関の鍵を開けておいた。

酒を一口飲んで喉をうるおしていると、玄関が開いた。
鍵とチェーンをかける音の後にこちらに向かってくる足音。

Aは酒を片手に爆豪を出迎えた。

「こんな時間にどうしたの？私もさっき帰ってきたところだから、時間がずれてたらいなかったかも──」
「A」
「ん？」

爆豪の呼びかけにAは首を傾げる。
なんだか様子がおかしいと、顔を顰めた次の瞬間──……

「てめぇ……今日、男と会ってたな？」
「へ？」

突拍子もない言葉が自分に向けられて、思考が停止する。
その反応がいけなかった。
短く声を発して動かなくなったAに爆豪は素早く詰め寄った。

顔が赤い。
少し荒い息から、強い酒のにおいが漂ってきた。

「あの……勝己君、酔ってる？」
「ンなことはどーでもいい。答えろ。今日は誰と会ってたんだ」
「誰とって友達……」
「嘘つくんじゃねぇ！！」

突然の大きな声にAの肩がびくっと跳ねた。
驚きで閉じた目を恐る恐る開けて爆豪を見る。

「あ、あのね……友達って言うのは──……あ、」

弁解しようと手を前に出すと、持っていた缶が爆豪に奪われた。
目の前でぐいっと一気に飲み干され、洗い場に放り投げる。

「──来い」
「……あ、ちょ」

乱暴に腕を引かれる。
向かう先は寝室だった。
この先の展開を予想できたAは焦りをみせる。

「待って！話を聞いてっ」
「……」

表情を見せない後ろ姿に叫んで抵抗するが、腕を掴む爆豪の力は緩まることはなかった。

.